書評
『147ヘルツの警鐘 法医昆虫学捜査官』(講談社)
ウジのコカイン、犯人への路程
昨年度、江戸川乱歩賞を受賞した、2人の女性作家のうちの1人、川瀬七緒の受賞後初の長編。物語は、放火事件による女の焼死体の、解剖場面から始まる。およそ、女性作家らしくない、不気味な巻頭シーンだ。さらに、死体から球状のウジの塊が出てくる、という強烈な追い撃ちがあって、ますますインパクトが強まる。
事件を担当する、ベテランの警部補岩楯、若手刑事鰐川のコンビに、女性法医昆虫学者(おそらく本邦初)の赤堀涼子が、捜査に加わる。涼子は、周囲の刑事たちにうとまれながら、気後れせずに専門知識を駆使し、独自の捜査活動を展開する。採取されたウジからコカインが検出され、それがどこから由来したものか、ルーツをたどっていく過程が、読み手の興味を引っ張る。主要なキャラクターも、よく描き分けられている。
意外な犯人といった、本格ミステリー的な驚きはないものの、第1長編としては及第点をつけて、いいだろう。
朝日新聞 2012年9月2日
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