選評

『赤めだか』(扶桑社)

  • 2017/09/11
赤めだか  / 立川 談春
赤めだか
  • 著者:立川 談春
  • 出版社:扶桑社
  • 装丁:文庫(306ページ)
  • 発売日:2015-11-20
  • ISBN-10:459407362X
  • ISBN-13:978-4594073626
内容紹介:
二宮和也、ビートたけし出演! テレビドラマ化決定!<12月28日(月)よる9時~ TBS系で放送>笑って泣いて胸に沁みる、破天荒な名エッセイ、待望の文庫化!~談春さんは … もっと読む
二宮和也、ビートたけし出演! テレビドラマ化決定!

<12月28日(月)よる9時~ TBS系で放送>

笑って泣いて胸に沁みる、破天荒な名エッセイ、待望の文庫化!



~談春さんは 談志さんが残した最高傑作~

――ビートたけし



17歳で天才落語家・立川談志に入門。

両親の反対により新聞配達をしながら、「上の者が白いと云えば黒いもんでも白い」世界での落語家前座修業が始まる。

三日遅れの弟弟子は半年で廃業。なぜか築地市場で修業を命じられ、一門の新年会では兄弟子たちがトランプ博打を開帳し、

談志のお供でハワイに行けばオネーサンに追いかけられる……。

様々なドタバタ、試練を乗り越え、談春は仲間とともに二ツ目昇進を目指す!



テレビドラマ『下町ロケット』(TBS系)などで俳優としても活躍、

「今、最もチケットの取れない落語家」の異名を持つ立川談春のオリジンがここに!


<2008年講談社エッセイ賞受賞作品>







立川談春(たてかわ・だんしゅん)

1966年、東京都生まれ。1984年、17歳で立川談志に入門。1988年、二ツ目昇進。1997年、真打昇進。2014~15年、

落語家三十周年記念落語会「もとのその一」で日本全国を周る。2008年、本書で講談社エッセイ賞受賞。

最近は、『ルーズヴェルト・ゲーム』『下町ロケット』(TBS系)等のテレビドラマでも俳優として活躍

講談社エッセイ賞(第24回)

受賞作=立川談春「赤めだか」/他の選考委員=東海林さだお、坪内祐三、林真理子/主催=講談社/発表=「小説現代」二〇〇八年九月号

ささやかな遺恨

いつだったか立川談春氏が「en―taxi」誌上で、〈井上ひさしさんは勘三郎(かんざぶろう)さんの出演台本が書きたくて、中村屋(なかむらや)にお世辞べったり擦(す)り寄っているという噂だ。〉と発言したことがある。わたしはどんな俳優にも、そして一度たりとも「書かせてちょうだい」などと媚(こび)を売ったことはない。それほど落ちぶれてはいないからだ。さっそく編集部に抗議したが、けんもほろろの門前払い。一日半くらい腹をたてていたことがある。つまりこの『赤めだか』を読む前は、根も葉もない噂を喋り散らして他人の名誉を傷つける男が書いた本という、ささやかな遺恨(いこん)が評者(わたし)にはあったことにある。

読み進めながら、なにか冷え冷えしたものを感じた。この人の心の芯は燃えていない。けれども、この冷たい客観性が、じつはこの好著を生み出した原動力になっているところがおもしろい。

隠れた主役は談春氏の師匠立川談志。毎朝三十分近く歯を磨きつづけ(口が商売道具だから当然だが)、マヨネーズがきらいで、稲庭(いなにわ)うどんは値段が高いから好き。なによりも海が好きで〈一度入ったら二、三時間は平気で出てこない。〉などなど、不世出のはなし家談志の、ふしぎな、しかしむやみにおもしろい日常が読む者の胸にびしびしと入り込んでくる。そしておしまいの数十行……師匠小(こ)さんに背いた形になった談志は、その師匠の葬式に出なかったが、そのときの言葉はこうである。〈「談志(オレ)の心の中には、いつも小さんがいるからだ」〉

このくだりで作者はそれまで塞(せ)き止めておいた感情を一気に放出する。冷たかった筆が白熱する。みごとな計算であり芸であり、一編のオチである。評者のささやかな遺恨もこのときに消えた。おめでとう。

【この選評が収録されている書籍】
井上ひさし全選評 / 井上 ひさし
井上ひさし全選評
  • 著者:井上 ひさし
  • 出版社:白水社
  • 装丁:単行本(821ページ)
  • 発売日:2010-02-01
  • ISBN-10:4560080380
  • ISBN-13:978-4560080382
内容紹介:
2009年までの36年間、延べ370余にわたる選考会に出席。白熱の全選評が浮き彫りにする、文学・演劇の新たな成果。

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

赤めだか  / 立川 談春
赤めだか
  • 著者:立川 談春
  • 出版社:扶桑社
  • 装丁:文庫(306ページ)
  • 発売日:2015-11-20
  • ISBN-10:459407362X
  • ISBN-13:978-4594073626
内容紹介:
二宮和也、ビートたけし出演! テレビドラマ化決定!<12月28日(月)よる9時~ TBS系で放送>笑って泣いて胸に沁みる、破天荒な名エッセイ、待望の文庫化!~談春さんは … もっと読む
二宮和也、ビートたけし出演! テレビドラマ化決定!

<12月28日(月)よる9時~ TBS系で放送>

笑って泣いて胸に沁みる、破天荒な名エッセイ、待望の文庫化!



~談春さんは 談志さんが残した最高傑作~

――ビートたけし



17歳で天才落語家・立川談志に入門。

両親の反対により新聞配達をしながら、「上の者が白いと云えば黒いもんでも白い」世界での落語家前座修業が始まる。

三日遅れの弟弟子は半年で廃業。なぜか築地市場で修業を命じられ、一門の新年会では兄弟子たちがトランプ博打を開帳し、

談志のお供でハワイに行けばオネーサンに追いかけられる……。

様々なドタバタ、試練を乗り越え、談春は仲間とともに二ツ目昇進を目指す!



テレビドラマ『下町ロケット』(TBS系)などで俳優としても活躍、

「今、最もチケットの取れない落語家」の異名を持つ立川談春のオリジンがここに!


<2008年講談社エッセイ賞受賞作品>







立川談春(たてかわ・だんしゅん)

1966年、東京都生まれ。1984年、17歳で立川談志に入門。1988年、二ツ目昇進。1997年、真打昇進。2014~15年、

落語家三十周年記念落語会「もとのその一」で日本全国を周る。2008年、本書で講談社エッセイ賞受賞。

最近は、『ルーズヴェルト・ゲーム』『下町ロケット』(TBS系)等のテレビドラマでも俳優として活躍

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

初出メディア

小説現代

小説現代 2008年9月

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