書評

『嵐が丘』(新潮社)

  • 2017/10/23
嵐が丘 / エミリー・ブロンテ
嵐が丘
  • 著者:エミリー・ブロンテ
  • 翻訳:鴻巣 友季子
  • 出版社:新潮社
  • 装丁:ペーパーバック(707ページ)
  • 発売日:2003-06-28
  • ISBN-10:410209704X
  • ISBN-13:978-4102097045
内容紹介:
永遠の恋愛小説。待望の新訳成る!

寒風吹きすさぶヨークシャーにそびえる〈嵐が丘〉の屋敷。その主人に拾われたヒースクリフは、屋敷の娘キャサリンに焦がれながら、若主人の虐待を耐え忍んできた。そんな彼にもたらされたキャサリンの結婚話。絶望に打ちひしがれて屋敷を去ったヒースクリフは、やがて莫大な富を得、復讐に燃えて戻ってきた……。一世紀半にわたって世界の女性を虜にした恋愛小説の“新世紀決定版”。
三〇歳で終わる生涯、ヨークシャーの荒野から離れたことがなく、しかも一度も恋愛をしたことがない厳格な牧師の娘は、おのが想像のなかでヒースクリフという悪人をこしらえた。サドの作品の登場人物にもなれるこの男の悪行をつぶさに書き、しかもヒロイン、キャサリンには「わたしはヒースクリフよ」といわせ、一緒に過ごした少女時代から破滅に至るまでこの男なしにはいられない運命を与える。敬虚で、道徳的であるということには裏がある。「世界でもっとも孤独な人」を愛することが、キリストへの愛につながるという信仰からすれば、ヒースクリフに対するキャサリンの愛、ブロンテの悪に対する執着は説明できるかもしれない。苦悩にさいなまれ続ける限り、祝福は近い。荒涼たる嵐が丘にしがみつくこと自体が、キャサリンにとっての唯一の救済だとするならば、さらに彼女を追い詰めるヒースクリフの暴力は僥倖に転化するのだ。拾われて嵐が丘に連れてこられ、やがて共同体の破壊者にして、収奪者になるヒースクリフとキャサリンの関係は、アングロ・サクソンのヒロインとヒスパニックの男とのあいだの性的妄想がパターンになっているハーレクイン・ロマンスの原型でもある。ヒースクリフのようなよそ者に妻や娘を寝取られてしまうのではないか、という恐怖が、アメリカ人のナショナリズムの根源にあるのではないか。

【この書評が収録されている書籍】
必読書150 / 柄谷 行人,岡崎 乾二郎,島田 雅彦,渡部 直己,浅田 彰,奥泉 光,スガ 秀実
必読書150
  • 著者:柄谷 行人,岡崎 乾二郎,島田 雅彦,渡部 直己,浅田 彰,奥泉 光,スガ 秀実
  • 出版社:太田出版
  • 装丁:単行本(221ページ)
  • 発売日:2002-04-01
  • ISBN-10:4872336569
  • ISBN-13:978-4872336566
内容紹介:
現実に立ち向かう知性回復のために本当に必要なカノン(正典)を提出し、読まなくてもいい本を抑圧する、反時代的、強制的ブックガイド。

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

嵐が丘 / エミリー・ブロンテ
嵐が丘
  • 著者:エミリー・ブロンテ
  • 翻訳:鴻巣 友季子
  • 出版社:新潮社
  • 装丁:ペーパーバック(707ページ)
  • 発売日:2003-06-28
  • ISBN-10:410209704X
  • ISBN-13:978-4102097045
内容紹介:
永遠の恋愛小説。待望の新訳成る!

寒風吹きすさぶヨークシャーにそびえる〈嵐が丘〉の屋敷。その主人に拾われたヒースクリフは、屋敷の娘キャサリンに焦がれながら、若主人の虐待を耐え忍んできた。そんな彼にもたらされたキャサリンの結婚話。絶望に打ちひしがれて屋敷を去ったヒースクリフは、やがて莫大な富を得、復讐に燃えて戻ってきた……。一世紀半にわたって世界の女性を虜にした恋愛小説の“新世紀決定版”。

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