書評
『納棺夫日記』(文藝春秋)
死者の体を清めて棺に納める。そんな納棺の仕事に就いた青年を描き、国内外で高い評価を得ている映画「おくりびと」。主演俳優であり、映画の発案者でもある本木雅弘さんが、以前読んでいたというのが本書だ。
「毎日毎日、死者ばかり見ていると、死者は静かで美しく見えてくる」と著者は語る。と同時に、死を恐れる生者たちの、醜悪さが気になるようになってきた、とも。死を忌むものとしてでなく、誰にでも訪れるものとして真っすぐ見つめる眼差(まなざ)しに触れるうち、次第にこちらの心も静かになっていく。
96年の文庫版刊行以降、ほぼ年に1回は重版されてきたロングセラー。昨年9月の映画公開時、特に宣伝はしなかった。が、口コミで本書の存在が広まり、公開後は月間販売部数が20倍に。現在もオビに本木さんの名や映画名をいれ、好調を保っている。読者層は男女ともに30〜40代がメーンだが、50代以上、20代の読者も少なくない。また公開前の男女比は1対1だったが、公開後は1対2に。
日記形式というわけではない。1、2章は納棺夫としての体験を交えて語られるが、第3章は死に対する考察が、宗教観や宇宙観まで交えてつづられる。さらに文庫では単行本刊行後の日々についても加筆。「納棺夫という仕事に興味を持って手にする方も多いと思いますが、本書はそれだけでなく、死とはどういうことか、深く掘り下げて書かれています。そこが長く読まれる普遍的な本になった理由だと思います」と、文庫編集長の柏原光太郎さん。この先アカデミー賞発表などが終わり映画の話題が落ち着いても、読みつがれていく一冊だろう。
「毎日毎日、死者ばかり見ていると、死者は静かで美しく見えてくる」と著者は語る。と同時に、死を恐れる生者たちの、醜悪さが気になるようになってきた、とも。死を忌むものとしてでなく、誰にでも訪れるものとして真っすぐ見つめる眼差(まなざ)しに触れるうち、次第にこちらの心も静かになっていく。
96年の文庫版刊行以降、ほぼ年に1回は重版されてきたロングセラー。昨年9月の映画公開時、特に宣伝はしなかった。が、口コミで本書の存在が広まり、公開後は月間販売部数が20倍に。現在もオビに本木さんの名や映画名をいれ、好調を保っている。読者層は男女ともに30〜40代がメーンだが、50代以上、20代の読者も少なくない。また公開前の男女比は1対1だったが、公開後は1対2に。
日記形式というわけではない。1、2章は納棺夫としての体験を交えて語られるが、第3章は死に対する考察が、宗教観や宇宙観まで交えてつづられる。さらに文庫では単行本刊行後の日々についても加筆。「納棺夫という仕事に興味を持って手にする方も多いと思いますが、本書はそれだけでなく、死とはどういうことか、深く掘り下げて書かれています。そこが長く読まれる普遍的な本になった理由だと思います」と、文庫編集長の柏原光太郎さん。この先アカデミー賞発表などが終わり映画の話題が落ち着いても、読みつがれていく一冊だろう。
朝日新聞 2009年1月18日
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