選評

『クアトロ・ラガッツィ―天正少年使節と世界帝国』(集英社)

  • 2018/08/05
クアトロ・ラガッツィ―天正少年使節と世界帝国 / 若桑 みどり
クアトロ・ラガッツィ―天正少年使節と世界帝国
  • 著者:若桑 みどり
  • 出版社:集英社
  • 装丁:単行本(550ページ)
  • ISBN:4087753263
内容紹介:
「四人の少年の運命は日本の運命にほかならない」ローマ、ヴァティカン、ゴア、マカオに取材して八年。若桑みどりが世界史的視野から日本の歴史を問い直す!世界帝国の波涛が押し寄せる信長・秀吉の時代、鮮烈に生きた美しい若者達がいた。遙か世界へと船出した四少年の悲劇の向こうにあたらしい日本が見える。

大佛次郎賞(第31回)

受賞作=佐伯一麦「鉄塔家族」、若桑みどり「クアトロ・ラガッツィ 天正少年使節と世界帝国」/他の選考委員=川本三郎、髙樹のぶ子、山折哲雄、養老孟司/主催=朝日新聞社/発表=同紙二〇〇四年十二月二十三日

長編の身辺雑記に成功

あの宣教師の時代に、厖大(ぼうだい)な量の日本見聞録が書かれたが、若桑みどりさんのこの二段組み五百余頁の大著は、その選択的な一大集成である。

そこに浮かび上がるのは、当時の日本と世界との躍動しつつ激変する巨大な歴史のうねり。そのうねりの中を少年たちは、はるばるローマを目指す……当時の日本と世界の様子が丸ごとわかる本だ。少年使節のローマ体験を、若桑さんはご自分のローマ体験と重ねているので、いたるところで文章が生き生きと弾み、その快い弾みに乗ってあっという間に読みあげてしまった。

佐伯一麦さんの『鉄塔家族』は、地方都市の丘の上に巨大な鉄塔が完成するまでの、付近の人びとの身辺雑記の体裁を装った大長編である。

身辺雑記と大長編、水と油のようだが、文章がいいから、つい読まされてしまううちに、主人公の別れた妻の影がゆっくりと姿を現してくる。この前妻とのやりとりは切実で、哀(かな)しく、不謹慎かもしれないが、むやみにおもしろい。そして読み終わったとき、わたしたちが噛(か)み締めるのは、「この世で片付くことはなにもない。すべて普請中」という人生の苦さである。身辺雑記で大長編を書くという実験的な試みはみごとに成功した。

【この選評が収録されている書籍】
井上ひさし全選評 / 井上 ひさし
井上ひさし全選評
  • 著者:井上 ひさし
  • 出版社:白水社
  • 装丁:単行本(821ページ)
  • ISBN:4560080380
内容紹介:
2009年までの36年間、延べ370余にわたる選考会に出席。白熱の全選評が浮き彫りにする、文学・演劇の新たな成果。

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

クアトロ・ラガッツィ―天正少年使節と世界帝国 / 若桑 みどり
クアトロ・ラガッツィ―天正少年使節と世界帝国
  • 著者:若桑 みどり
  • 出版社:集英社
  • 装丁:単行本(550ページ)
  • ISBN:4087753263
内容紹介:
「四人の少年の運命は日本の運命にほかならない」ローマ、ヴァティカン、ゴア、マカオに取材して八年。若桑みどりが世界史的視野から日本の歴史を問い直す!世界帝国の波涛が押し寄せる信長・秀吉の時代、鮮烈に生きた美しい若者達がいた。遙か世界へと船出した四少年の悲劇の向こうにあたらしい日本が見える。

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初出メディア

朝日新聞

朝日新聞 2004年12月23日

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