後悔とその後の世界(書き手:書肆侃侃房 池田雪)
相川英輔の『雲を離れた月』を何度も読む。読むたびに、学生時代のあれやこれやが蘇ってきて、ちょっとしたタイムトリップを味わう。さて、いまも小学生のときにバカなことをした記憶が蘇り、いろんなことを忘れているのにそういう覚えておきたくないことだけは何度も思い出すものなのだ。でも、そういうときには無理やり楽しい話を思い出してみるのもいい。もう中学も高校も大学でさえも学生時代は遥か彼方だが好き勝手にいろいろとやっていたものだ。表題作「雲を離れた月」に出てくるコックリさん、もちろんやりました。女の子同士、誰は誰のことが好きなど、コックリさんに聞いて盛り上がったけれど、どう考えても、あれ、誰か動かしてたよね……。でも、彼らはどうだったのだろうか。誰も動かしてないと言っていたのが本当だったとしたら……。「二十歳までに三人死ぬ」、そんな呪いをかけられたら、そのまま何も考えずに人生を歩むことなどできないだろう。そう、源のようにきっと確かめずにはいられなかったはずだ。やっと見つけた酒見くんとの間に何が起こるのか気になって、ゲラをめくる手が止まらなくなった。
物語の登場人物たちは、迷い、惑いながら物語の中を生き生きと進んでいく。それぞれが後悔をし、でも着実に一歩を踏み出す瞬間も目の当たりにできる。
さて、あなたはこの物語を読んでいつの時代に思いを馳せるのだろうか。そして、そこから新しい一歩を踏み出したあの瞬間を思い出すためにもこの物語をぜひ読んでみてください。