書評

『路地―Wandering Back Alleys』(清流出版)

  • 2018/07/02
路地―Wandering Back Alleys /
路地―Wandering Back Alleys
  • 出版社:清流出版
  • 装丁:単行本(158ページ)
  • ISBN-10:4860290992
  • ISBN-13:978-4860290993
内容紹介:
「小屋の肖像」の写真家中里和人が、東京・向島、沖縄・那覇、広島・尾道など、日本各地に「今も生きる路地」を、独自の乾いたリリシズムで切り撮った。古くて新しい、ノスタルジックにしてキッチュな写真集。
中里和人氏には「小屋の肖像」という写真集がある。作業小屋や物置に使われる粗末な小屋を、日本中歩いて収集したような写真集。

噂(うわさ)を聞いて、へえ、そんな写真集ダレが買うんだろう、と思っていたら家人が買ってあるという。

見るとイイのだ。一軒一軒の小屋の、まさに肖像である。それが美しい。こんなみすぼらしい「小屋」が鑑賞の対象になる。

今度の「路地」も、家人が買ってきた。広告を見て、目指して買いにいったという。

この人は、期待を裏切らない。路地が写っている。たいがいは人気のない、道が写っているのだが、ある気配が感じられる。そしてそこを歩いていく自分の息遣いが聞こえてくるような写真だ。

私はどうも道に迷っているらしい。次々に様々な路地に出ていくのに、どこもひどくなつかしい。

なつかしい。という精神の状態とはなんだろう。とくに風景にそれを感じている時の心のありようというのは説明しづらい。

そこを知っているはずではないのに、そこを歩いたことなどないのに、強くひきつけられている。

この写真集はまたも新しい見る楽しみを与えてくれた。
路地―Wandering Back Alleys /
路地―Wandering Back Alleys
  • 出版社:清流出版
  • 装丁:単行本(158ページ)
  • ISBN-10:4860290992
  • ISBN-13:978-4860290993
内容紹介:
「小屋の肖像」の写真家中里和人が、東京・向島、沖縄・那覇、広島・尾道など、日本各地に「今も生きる路地」を、独自の乾いたリリシズムで切り撮った。古くて新しい、ノスタルジックにしてキッチュな写真集。

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初出メディア

朝日新聞

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