書評

『なぜ資本主義は暴走するのか―「株主価値」の恐るべき罠』(日本経済新聞社)

  • 2017/07/11
なぜ資本主義は暴走するのか―「株主価値」の恐るべき罠 / ロジャー ローウェンスタイン
なぜ資本主義は暴走するのか―「株主価値」の恐るべき罠
  • 著者:ロジャー ローウェンスタイン
  • 翻訳:鬼澤 忍,鬼沢 忍
  • 出版社:日本経済新聞社
  • 装丁:単行本(341ページ)
  • ISBN-10:4532351634
  • ISBN-13:978-4532351632
内容紹介:
乗っ取り屋の登場は、企業の経営をどのように変え、何を狂わせたのか?株価が低迷していた1980年代初頭、ウォール街に新たな職業が登場した。「企業乗っ取り屋」である。LBO(レバレッジド・バイ… もっと読む
乗っ取り屋の登場は、企業の経営をどのように変え、何を狂わせたのか?株価が低迷していた1980年代初頭、ウォール街に新たな職業が登場した。「企業乗っ取り屋」である。LBO(レバレッジド・バイアウト)を駆使して株を買い占め、会社の支配権を奪う強引な手法に、経営者たちは震え上がった。乗っ取りを防ぎ、自らの地位を守るためには、株価を上げるしかない-そのために数々のカラクリが編み出された結果、株式市場は空前の活況を呈した。だが、企業の成長よりも株価を優先し、目先の利益ばかりを追い求める経営の果てには、株式市場全体を巻き込んだ破綻劇が待っていた!本格的な企業買収時代を迎えた日本の経営者・投資家・政治家・市場関係者が今こそ知っておくべき歴史的プロセスを、第一級の金融ジャーナリストが深い洞察力で克明に描く。
ライブドアのニッポン放送買収事件の際、多くの経営者が肝を冷やしたことに、外国株による「三角合併」解禁問題がある。来春から株を等価交換できる予定だったのだが、日本企業は株価が安いため全製薬会社を合わせても株価総額がファイザー製薬の5%に過ぎない。軒並み外資に買収されるところだったのだ。

「企業価値」でなく「株主価値」を中心とする資本主義では、経営者は絶えず株価を引き上げねばならない。本書はそうした状況が90年代のアメリカに起こした酸鼻を極める顛末(てんまつ)のリポートである。

当初、経営者は企業防衛に努めただけだが、ストックオプションで年俸を得ると株価吊(つ)り上げが自己目的化し、会計士は経営収益と株価を切り離す粉飾に邁進(まいしん)、一般家計までが年金を株につぎ込むに至る。

結果がエンロンやワールドコムの破綻(はたん)と年金の消失であった。日本の未来は、ここに予告されている。
なぜ資本主義は暴走するのか―「株主価値」の恐るべき罠 / ロジャー ローウェンスタイン
なぜ資本主義は暴走するのか―「株主価値」の恐るべき罠
  • 著者:ロジャー ローウェンスタイン
  • 翻訳:鬼澤 忍,鬼沢 忍
  • 出版社:日本経済新聞社
  • 装丁:単行本(341ページ)
  • ISBN-10:4532351634
  • ISBN-13:978-4532351632
内容紹介:
乗っ取り屋の登場は、企業の経営をどのように変え、何を狂わせたのか?株価が低迷していた1980年代初頭、ウォール街に新たな職業が登場した。「企業乗っ取り屋」である。LBO(レバレッジド・バイ… もっと読む
乗っ取り屋の登場は、企業の経営をどのように変え、何を狂わせたのか?株価が低迷していた1980年代初頭、ウォール街に新たな職業が登場した。「企業乗っ取り屋」である。LBO(レバレッジド・バイアウト)を駆使して株を買い占め、会社の支配権を奪う強引な手法に、経営者たちは震え上がった。乗っ取りを防ぎ、自らの地位を守るためには、株価を上げるしかない-そのために数々のカラクリが編み出された結果、株式市場は空前の活況を呈した。だが、企業の成長よりも株価を優先し、目先の利益ばかりを追い求める経営の果てには、株式市場全体を巻き込んだ破綻劇が待っていた!本格的な企業買収時代を迎えた日本の経営者・投資家・政治家・市場関係者が今こそ知っておくべき歴史的プロセスを、第一級の金融ジャーナリストが深い洞察力で克明に描く。

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初出メディア

朝日新聞

朝日新聞 2005年11月6日

朝日新聞デジタルは朝日新聞のニュースサイトです。政治、経済、社会、国際、スポーツ、カルチャー、サイエンスなどの速報ニュースに加え、教育、医療、環境、ファッション、車などの話題や写真も。2012年にアサヒ・コムからブランド名を変更しました。

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