書評
『なぜ資本主義は暴走するのか―「株主価値」の恐るべき罠』(日本経済新聞社)
ライブドアのニッポン放送買収事件の際、多くの経営者が肝を冷やしたことに、外国株による「三角合併」解禁問題がある。来春から株を等価交換できる予定だったのだが、日本企業は株価が安いため全製薬会社を合わせても株価総額がファイザー製薬の5%に過ぎない。軒並み外資に買収されるところだったのだ。
「企業価値」でなく「株主価値」を中心とする資本主義では、経営者は絶えず株価を引き上げねばならない。本書はそうした状況が90年代のアメリカに起こした酸鼻を極める顛末(てんまつ)のリポートである。
当初、経営者は企業防衛に努めただけだが、ストックオプションで年俸を得ると株価吊(つ)り上げが自己目的化し、会計士は経営収益と株価を切り離す粉飾に邁進(まいしん)、一般家計までが年金を株につぎ込むに至る。
結果がエンロンやワールドコムの破綻(はたん)と年金の消失であった。日本の未来は、ここに予告されている。
「企業価値」でなく「株主価値」を中心とする資本主義では、経営者は絶えず株価を引き上げねばならない。本書はそうした状況が90年代のアメリカに起こした酸鼻を極める顛末(てんまつ)のリポートである。
当初、経営者は企業防衛に努めただけだが、ストックオプションで年俸を得ると株価吊(つ)り上げが自己目的化し、会計士は経営収益と株価を切り離す粉飾に邁進(まいしん)、一般家計までが年金を株につぎ込むに至る。
結果がエンロンやワールドコムの破綻(はたん)と年金の消失であった。日本の未来は、ここに予告されている。
朝日新聞 2005年11月6日
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