書評

『星を継ぐもの』(東京創元社)

  • 2017/07/04
星を継ぐもの  / ジェイムズ・P.ホーガン
星を継ぐもの
  • 著者:ジェイムズ・P.ホーガン
  • 翻訳:池 央耿
  • 出版社:東京創元社
  • 装丁:文庫(309ページ)
  • 発売日:1980-05-23
  • ISBN:448866301X
内容紹介:
月面調査員が真紅の宇宙服をまとった死体を発見した。綿密な調査の結果、この死体は何と死後五万年を経過していることがわかった。果たして現生人類とのつながりはいかなるものなのか。やがて木星の衛星ガニメデで地球のものではない宇宙船の残骸が発見された……。ハードSFの新星が一世を風靡した出世作。

5万年のアリバイ崩し

本国ではそうでもないのに、日本でめちゃくちゃ人気の高い翻訳小説というのがたまにある。SFでは、ジェイムズ・P・ホーガン『星を継ぐもの』(池央耿訳、創元SF文庫)がその筆頭。

著者は1941年、英国ロンドン生まれ。77年に米国で刊行したデビュー長編『星を継ぐもの』は、80年に邦訳されるとたちまち熱狂的な支持を集め、翌年、日本SF大会参加者が投票で選ぶ星雲賞海外長編部門を受賞した。この邦訳版は、発売から35年間で94刷、累計45万部と、創元SF文庫最大のヒットを記録。昨年電子書籍化されて、そちらもベストセラー街道を驀進(ばくしん)している。ところが英語版の本は、イギリスでもアメリカでも品切れ。かろうじてオーディオブック(朗読版)は買えるものの、いまは電子書籍も手に入らない。日本では、星野之宣の手で漫画化までされているのに、それとは大違いのさびしい状況だ。

物語は、月面で真紅の宇宙服をまとった死体が見つかるところから始まる。チャーリーと名づけられたこの死体は、炭素年代測定の結果、死後5万年を経過していることが判明。だが、主人公格の生物学者ダンチェッカーは“彼”が地球生まれの人類にまちがいないと断言する。いったいどういうことなのか? 一方、木星の衛星ガニメデでは、地球のものではない宇宙船の残骸が発見された。

謎が謎を呼び、白熱した議論の中から、やがて驚くべき仮説が生まれる。

……とまあ、話の骨格は思いきり風呂敷の大きなミステリ。“5万年のアリバイ崩し”(堀晃)とも評された。77年当時でさえ、現代SFにしては古典的な道具立てだったが、だからこそ普遍的なおもしろさを獲得したのかもしれない。

著者のホーガンはSF大会のゲストとして86年に来日。僕の義弟(妻の妹の旦那)がホーガンの親友だったこともあり、その後も何度か歓談する機会があったが、酒と女性をこよなく愛する、冗談好きで気のいいおっちゃんでした。2010年に69歳で病没。晩年、英米では本が売れず、不遇だったが、日本では30年以上ずっと愛されつづけている。

星を継ぐもの  / ジェイムズ・P.ホーガン
星を継ぐもの
  • 著者:ジェイムズ・P.ホーガン
  • 翻訳:池 央耿
  • 出版社:東京創元社
  • 装丁:文庫(309ページ)
  • 発売日:1980-05-23
  • ISBN:448866301X
内容紹介:
月面調査員が真紅の宇宙服をまとった死体を発見した。綿密な調査の結果、この死体は何と死後五万年を経過していることがわかった。果たして現生人類とのつながりはいかなるものなのか。やがて木星の衛星ガニメデで地球のものではない宇宙船の残骸が発見された……。ハードSFの新星が一世を風靡した出世作。

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初出メディア

西日本新聞

西日本新聞 2015年6月9日

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