書評
『海外コリアン―パワーの源泉に迫る』(中央公論新社)
パワーの源は教育と民族主義
正直いって、ここまで盛り上がると思ってなかったよ、ワールドカップ。日本人の熱狂もすごいけど、テレビで見る韓国サポーターの応援ぶりはもっとすごい。もちろん韓国にだって「サッカーなんか興味ないね」という人がいるはずで、「韓国人は熱い」なんて一般化してはいけないのだけど(ALL REVIEWS事務局注:本書評執筆年は2002年)。というわけで、朴三石『海外コリアン』を読む。アメリカや中国、そして日本など、朝鮮半島以外で暮らす朝鮮民族系の人々の活躍ぶりについて書かれた本だ。
海外コリアン六百万人という、その数字に驚く。北朝鮮と韓国を合わせた人口は六千八百万人ぐらいだから、これは多い。ちなみに、本書によると海外の日本人・日系人は二百一万人だという(ただし十年前の数字)。
海外コリアンは、それぞれの移住先で独自のコミュニティを作って生活し、影響力のある集団となっている。本書の副題は「パワーの源泉に迫る」だが、その「源泉」は教育への意欲と強固な民族意識にあるようだ。
ブロードウェイのコリアン街の話が面白い。彼らが成功するきっかけはカツラだった。六〇年代のカツラブームで財を築き、それを元に他のビジネスに進出していく。いまやニューヨークの青果商の八割、鮮魚商の七割が在米コリアンによって占められている。一つの業種に集中し、民族ネットワークを活用して拡大する、というスタイルが見えてくる。
本書ではアメリカ、中国、ロシア・中央アジア、そして日本のコリアンたちが語られる。海外コリアンが移住先で他民族の姓を名乗るのは、日本だけだ。日本社会だけが、彼らに「通名」の使用を強要する。植民地支配と創氏改名の歴史を引きずっているのだ。たとえば芸能界でも多くの在日コリアンが活躍しているが、本名や民族的ルーツを公表できない状況、公表すると不利益を被る状況がある。私は在日日系日本人として、この状況をとても恥ずかしいと思う。
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