書評

『GEQ』(角川書店)

  • 2017/08/23
GEQ / 柴田 哲孝
GEQ
  • 著者:柴田 哲孝
  • 出版社:角川書店
  • 装丁:単行本(433ページ)
  • 発売日:2010-02-26
  • ISBN-10:4048740237
  • ISBN-13:978-4048740234
内容紹介:
1995年1月17日午前5時46分阪神淡路大震災勃発。事実を積み重ねれば、恐るべき"真実"となる。GEQ(大地震)の裏に隠された陰謀とは?読む者を震撼させずにはおかない驚異の長編ミステリー。

大地震めぐる虚実皮膜の世界

この本は、読み方によって問題作と評価する人と、単なるキワモノと切り捨てる人の、2種類に分かれるだろう。

冒頭、1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災の模様が、さまざまな体験者、関係者の視点を通じて、簡潔に描かれる。同時に、以後の小説の展開にかかわりのある謎、疑義、異常現象などが手際よく提示され、読む者を作者の構築した虚実皮膜の世界へ、たくみにいざなっていく。

物語は、『下山事件 最後の証言』で実力を示した作者らしく、小説よりもノンフィクションに近い筆致で、ぐいぐいと読者を引っ張る。主人公は、米国籍を持つ日系3世のジョージ・松永。松永は、旧知の日本人ジャーナリストで、スマトラ沖地震のおりに死んだはずの、吉村武士からメールを受け取る。呼び出しに応じ、神戸に赴いた松永の前に現れたのは、死んだ吉村の元恋人と称する、樋口麻紀という女だった。麻紀は、大震災で家族を失った過去を持つ。

松永は、麻紀から手渡された吉村のメモに基づき、大震災の関係者を訪ね歩いて、インタビュー取材を始める。米国〈9・11〉同時多発テロ事件と同じく、背後に何か秘密があるとの確信から、麻紀の手を借りて果敢に調査を進めていく。

この大震災については、現実に人工地震説も含めて、さまざまな陰謀説、憶測が飛び交っている。地震発生時の、核爆発を思わせる大規模な閃光(せんこう)、震源地が2カ所あるという不可思議現象、救援態勢の異常なほどの遅れなど、疑惑をかき立てるエピソードには、事欠かない。

作者は、登場人物に実名と仮名を使い分けながら、そうした事実を一つずつ検証していく。政治情勢、経済情勢とのつながりにも、目配りが行き届いている。むろん、小説展開のための一方的、一面的な解釈も散見されるが、さほど強引さを感じさせないのは、作者の視点がぶれていないからだ。

なるほど、こういう見方もできるのか、と読者に思わせるだけでも、本書の試みは成功したといえよう。
GEQ / 柴田 哲孝
GEQ
  • 著者:柴田 哲孝
  • 出版社:角川書店
  • 装丁:単行本(433ページ)
  • 発売日:2010-02-26
  • ISBN-10:4048740237
  • ISBN-13:978-4048740234
内容紹介:
1995年1月17日午前5時46分阪神淡路大震災勃発。事実を積み重ねれば、恐るべき"真実"となる。GEQ(大地震)の裏に隠された陰謀とは?読む者を震撼させずにはおかない驚異の長編ミステリー。

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初出メディア

朝日新聞

朝日新聞 2010年4月18日

朝日新聞デジタルは朝日新聞のニュースサイトです。政治、経済、社会、国際、スポーツ、カルチャー、サイエンスなどの速報ニュースに加え、教育、医療、環境、ファッション、車などの話題や写真も。2012年にアサヒ・コムからブランド名を変更しました。

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