書評
『イルカの大研究―海のともだちのおしゃべりを聞いてみよう』(PHP研究所)
イルカのことを知りたくて
以前この欄で、いつか一緒に沖縄に行こうねと、息子と約束している……と書いたが、念願かなって、早くもそれが実現した。旅のきっかけは、妖怪に凝っている息子が「キジムナーに会いたい」と言いだしたこと。が、到着するなり彼は、キジムナーではなく「イルカ」のとりこになってしまった。滞在していたホテルで数頭飼われていて、子どもでも触れあえるプログラムが用意されていた。初めてそばで見るイルカを前に、息子の目がハート型になっている。
「か、かわいい……!!」
確かに、魚とは違って、うるうるした瞳が、ものすごくチャーミングだ。息子が投げた輪を、鼻先にひっかけて取ってきてくれたときには、感激はピーク。嬉しさのあまり身を乗り出しすぎて、海に落ちそうになっていた。
沖縄をあとにする日の朝まで、イルカの体温を測るところやエサやりの様子を見せてもらい、特に好きな子まで決めていた。その「ココちゃん」の缶バッジを買い、今では幼稚園のカバンにつけて通園している。
「ココちゃん、たくみんがバンザイしたらバンザイしたね。おへそを指さしたら、こんなふうにおなか見せてくれたね」と、ベッドに転がって毎晩イルカの真似をしている。
ここまで興味を持ったのならと、イルカの本を探すことにした。近所の本屋さんでは見つからなかったので、こういうときはインターネット。勘で二冊ほど注文してみた。
届いたものを見ると、一冊は幼児向きだが、もう一冊は「小学中級以上」とある。息子には難しそうだ。ネットって、こういう失敗があるのよね~と思いつつ見せると、意外や、その難しそうなほうを読みたがるのだった。
しかたがないので目次を開き、「どこがいい?」と、興味を持ったところから拾い読みをすることにした。
「イルカとクジラのちがい」
「おぼれた人をたすけたイルカ」
「イルカの天敵」
難しい言葉を噛みくだいて読んでやると、なんとかわかる。「わかりたい!」という気持ちが強いので、なんとかなっているようにも見える。こんな調子で、寝る前に一項目ずつ読んでいるところだ。私自身も知らなかったことがたくさんあって(イルカとクジラって、大きさだけの違いなんですね)、なかなかおもしろい。
「もっとこわい敵」という項目で「それはわたしたち人間なのです」と読みあげると、息子は布団のなかにもぐってしまった。
「ココちゃんは、ほんとうはたくみんのことがこわいの?」と涙目になっている。
いや、そうではなく、と続きを読み、安心し、また「海を汚さないようにしようね」という話もできた。
『イルカの大研究』。知識だけでなく、子どもに大事なことを伝えたいという著者の気持ちが、伝わってくる本だ。小学生になったら、もう一度自分で読んでほしいな、と思う。
【この書評が収録されている書籍】
朝日新聞 2008年02月27日
朝日新聞デジタルは朝日新聞のニュースサイトです。政治、経済、社会、国際、スポーツ、カルチャー、サイエンスなどの速報ニュースに加え、教育、医療、環境、ファッション、車などの話題や写真も。2012年にアサヒ・コムからブランド名を変更しました。
ALL REVIEWSをフォローする











































