書評

『封を切ると』(書肆山田)

  • 2021/12/06
封を切ると / 多田 智満子
封を切ると
  • 著者:多田 智満子
  • 出版社:書肆山田
  • 装丁:単行本(105ページ)
  • ISBN-10:4879955965
  • ISBN-13:978-4879955968
内容紹介:
本書は2003年1月23日に逝去した多田智満子の遺した詩から高橋睦郎が構成編集した。遺詩集全23篇。かろやかな遺言。
長い旅から帰ってきて詩人は安らいだ病床にある。

柩(ひつぎ)のなかにあるように/枕に頭を沈めていると/眠ってはまたふっとめざめる

眠りとめざめのみぎわ。昼と夜のまじわるたそがれ。白黒の碁石ならべ。相反する対立項が諧謔(かいぎゃく)を通じてめまぐるしく通じ合い、時間も過去現在未来が自在に融通し合う。

あさってから手紙がくるよ/あしたのことが書いてある

あれはあした あれはきのう/あたまくらくら

端正な文体によるサン・ジョン・ペルスやユルスナールの翻訳紹介者であり、鏡についての明晰(めいせき)なエッセイストとして知られた詩人多田智満子は、同時に文字摺(ず)りやわらべうたの柔らかくおさない言葉遊びをも楽しみ、楽しませてくれた。そこから老いは若さ、紅葉は青葉の諧謔がごく自然にほとばしり出る。あげくは新作能『乙女山姥(おとめやまうば)』が、くり返し脱皮して乙女に若返る山姥の転身の秘法を打ち明ける。昨年永眠した詩人多田智満子遺作集。
封を切ると / 多田 智満子
封を切ると
  • 著者:多田 智満子
  • 出版社:書肆山田
  • 装丁:単行本(105ページ)
  • ISBN-10:4879955965
  • ISBN-13:978-4879955968
内容紹介:
本書は2003年1月23日に逝去した多田智満子の遺した詩から高橋睦郎が構成編集した。遺詩集全23篇。かろやかな遺言。

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初出メディア

朝日新聞

朝日新聞 2004年3月21日

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