世界は魔法に満ちている
魅惑的な物語や神話、不思議な話の中心には必ず魔法使いがいる。光と影のはざまで魔法使いはその不思議な力を発揮し、自身の周囲に真実を作り上げる。遠い昔、わたしたちの祖先が火のまわりに腰をおろして語り合っていた頃も、コンピュータで特殊効果を作り出す現代においても、魔法使いがわたしたちを魅惑する点は変わらない。
本書は魔法使いと魔法の世界を探究する。
不思議と善と悪に満ちた世界。マーリンやニコラ・フラメル、ハリー・ドレスデンといった偉大な英雄が存在し、またサルマンやキルケー、バーバ・ヤガーなど恐ろしい悪者がいる世界だ。
書籍やテレビや映画、それにゲームのなかで魔法使いがどのように描かれているのかを見ていこう。
現実を変える力を求めて
魔法使いはわたしたちの生活のあちこちにしっかりと根付いている。1974年に発売された『ダンジョンズ&ドラゴンズ(D&D)』は、テーブルトーク・ロールプレイングゲームの祖だ。ゲームのなかでは、プレイヤーは魔法使いになって呪文を操ることができた。
それから何十年も経った現在も、最新版のD&Dにとどまらずコンピュータゲームでも、プレイヤーは魔法使いを演じている。
つまりは、わたしたちは魔法使いに「なりたい」のだ。
いくつか呪文を唱え、魔法の粉や薬草を空中に放り、そして芝居がかった身振りをして、なにかをあっという間に作り出す。今いるところとは別の場所へと、不思議な力で瞬間移動する。不思議で神秘的な知識を蓄え、魔法の杖をもっている。だれだってそんな魔法使いになってみたいはずだ。
小説や映画といったポップカルチャーに目を向ければ、人々がいかに魔法使いに胸躍らせているかがよくわかる。
J・K・ローリングの作品が刊行されたときには、何千万人もの人々が書店へと急いだ。ハリー・ポッターという名の少年が自分が魔法使いであることを知り、当惑しながらもホグワーツ魔法魔術学校で学ぶ物語だ。
映画もそうだ。サウロンや「ひとつの指輪」の力と戦う「灰色のガンダルフ」が登場する、ピーター・ジャクソン監督の『ロード・オブ・ザ・リング』。このシリーズを観ようと映画館へと足を運んだ観客は何百万人にものぼった。
さあ、この驚きに満ちた別世界の住人とともに、魔法の世界へと足を踏み入れよう。魔法のはじまりだ!
[書き手]オーブリー・シャーマン(ライター)(龍和子翻訳)