書評
『三面記事の歴史』(国書刊行会)
時代を超えて、のぞき見誘う
「三面記事」は、いまの日本でいえば、スポーツ新聞や夕刊紙のゴシップ欄やセンセーショナルな記事にあたる。奇矯な事故や犯罪、スキャンダルや痴情の果ての惨事といった、人がついのぞき見したくなるような記事だ。親族やライバルの殺害、テロリストによる暗殺、見せしめの虐殺……。本書の冒頭に掲げられた1035年から1934年までの殺人リストは、全部で百数十項目。殺人が政治を動かしてきたという事実に、背筋が寒くなる。その一方で、「3分間でワインを4リットル飲み死亡」とか、食膳のグリーンピースを鼻に詰め猿轡(さるぐつわ)をかませて自殺した囚人の話とか、あきれるような事実が満載。これにはいやでも胸が躍り、騒ぐ。
三面記事は時代を超えて同じ型を踏む。面白すぎる話のヴァリエーションににやりとしながら、他人の失敗を嗤(わら)うみずからの低き性(さが)を突きつけられもして、読者はふと我に返る。そういう意味ではちょっと意地悪な書でもある。
朝日新聞 2013年10月27日
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