書評
『ショパンゾンビ・コンテスタント』(新潮社)
堂々たる青春小説の王道
音大には入ったものの、はっきりとした理由もなく中退し、小説を書き続けている「ぼく」。友達の「源元(げんげん)」は素晴らしいピアノの名手で、とってもかわいい「潮里」という彼女がいる。基本的にはこの3人の物語である。源元の挑むピアノの世界は厳しいが、源元はどこかのほほんとその世界を楽しんでいる気配もある。
その世界を含めた自分たちの物語を小説として描き切ろうとしている主人公は、潮里のことが大好きなのだが、関係は深まることはない。
町屋良平は、いまだ何者にもなっていない若者たちを描くのが巧(うま)い。考えてみればそれは、青春小説の王道である。堂々とした青春小説を堪能する。
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