書評

『書をステディ町へレディゴー』(誠光社)

  • 2020/03/18
書をステディ町へレディゴー / 安田 謙一,辻井 タカヒロ
書をステディ町へレディゴー
  • 著者:安田 謙一,辻井 タカヒロ
  • 出版社:誠光社
  • 装丁:単行本(255ページ)
  • 発売日:2019-11-30
  • ISBN-10:499111490X
  • ISBN-13:978-4991114908
内容紹介:
バイト帰りにプールで泳いで、古本屋とレコード屋のぞいて、映画館立ち寄って、家でテレビ観ながら今日見聞きしたことを思い出す。音楽と時事ネタと私生活、文学とシモネタと世知辛さ。つなげて、モジッて、オチつけて・・書けた。意味はないけど滋味はある、笑えて学べて役立たない、「ロック漫筆」… もっと読む
バイト帰りにプールで泳いで、古本屋とレコード屋のぞいて、映画館立ち寄って、家でテレビ観ながら今日見聞きしたことを思い出す。音楽と時事ネタと私生活、文学とシモネタと世知辛さ。つなげて、モジッて、オチつけて・・書けた。意味はないけど滋味はある、笑えて学べて役立たない、「ロック漫筆」の集大成。安田謙一・辻井タカヒロの名バッテリーが、雑多な話題を広めのストライクゾーンへとお届けする、「白い名著」ここに誕生。

ローリング・ストーンズとケーシー高峰が、『テレホン人生相談』と『エクソシスト』が、天童よしみとシャッグスが、カフカと「およげ!たいやきくん」が、仲良く同居するコラムの数々を、見事に捕球し、打ち返す4コマ漫画の数々。世知辛い世の中と退屈な生活に、レコードが、テレビが、映画館が、安い飲み屋が、そして共通言語をもった相棒が存在することの喜びをしみじみと噛みしめることのできるコラム約120本。知らない本やレコード、映画をチェックしたり、捜したりしながら読めば数年間はたっぷり楽しめるであろう1冊。

雑誌「CDジャーナル」誌上で2010年から2019年まで連載された「書をステディ町へレディゴー」に、前身連載「ロックンロールストーブリーグ」4回分と、『ビートル・ストーリー』誌上で連載された「ポールがジョージにジョンずにリンゴの絵を描いた」13回分を追加収録。あとがきは夏葉社の島田潤一郎。

これ、読んでどうなるのか

『書をステディー町へレディゴー』。このタイトルを見た瞬間に、評者は本屋へレディゴーした、というのはもちろんウソである。実際には、本屋でぶらぶらしているときにひょいと見つけ、すぐレジに持っていった。「ロック漫筆家」と自称する安田謙一の文章は、初の評論集というかスクラップブック『ピントがボケる音』のときから大好物であり、セカンド・アルバム『なんとかとなんとかがいたなんとかズ』も、妙な神戸案内の『神戸、書いてどうなるのか』も愛読書になっている。そういうわけで、なにも考えずに『書をステディー町へレディゴー』も買ってしまい、さっそく喫茶店でのんびりしながらページをめくった。

安田謙一が書く「ロック漫筆」は、限られた字数のなかで、異常に情報量の多いものから、漫筆にふさわしくユルいものまでさまざまだが、雑誌『CDジャーナル』に連載された漫画家辻井タカヒロとのコラボによるコラム102回分を集めた本書は、そのなかでももっともユルいものに属するだろう。世の中にユルいエッセイはそれこそ掃いて捨てるほどある。そして、そのほとんどは、あきれるくらいにありきたりな観察や意見をまぶしてある作文にすぎない。しかし、安田謙一のロック漫筆は、そうしたありきたりなユルユル本とは一線を画していて、言葉が矛盾しているようだが、鍛えの入ったユルさなのである。

朝一番に映画館で観た、にっかつロマンポルノ回顧上映の話。古本屋の1冊百円棚で買った、三味線豊吉の『三味線隨筆』の話。ネット通販で海外から購入した、70年代のソビエト・ポップ歌手コーラ・ベルディの怪ヒット作「ツンドラに連れて行きます」の話。これ、読んでどうなるのか、と思わず言いたくなるようなレアな話題の数々が、平日に近所の公営プールで泳いだり浮かんだりしているうちに、そこが死後の世界に見えてくるといった日常生活のひとこまのなかに紛れ込み、自由自在な連想でつながる。カッパエビセンを口のなかに放り込むようにそういった文章を賞味していると、読者もついつい誘い込まれて、そう言えば井上陽水の「川に浮かんだプールでひと泳ぎ」というフレーズには、川=三途の川という解釈もあったなあとあらぬ空想を始めてしまえば、もうそこは安田謙一の世界である。

雑多なジャンルを勝手気ままに横断するひとつの芸は、本書のタイトルにも見られるモジリで、コラムのタイトルだけを拾っても、「ヘイ!自由度」「男はつらいぜよ」「モーもじり娘。」「で・じゃ・ぶーマイフレンド」「おTOMMYさん」「きけ ふくろとじのこえ」「21世紀の貸本」「旧ソ猫を噛むロック」などなど、やりたい放題だ。おまけに巻末には、「ポールがジョージにジョンずにリンゴの絵を描いた」というボーナス・トラックまで付いている。思えば関西には、「小津の魔法使い」という見出しが躍るスポーツ紙を阪神半疑の目で眺める文化が存在していたわけで、安田謙一はいかにも生粋の関西人だと映る。モジリの兄貴分、といったら怒られるか。

本を読んだり、映画を観たり、テレビを観たり、レコードを聴いたりするのは、なにも特殊なことではない。それは甲子園で酒を呑みながらナイターを観たり、かき氷を食べたり、温泉につかったり、といった日常の生活とまったく区別がない。だから読者も、これ、読んでどうなるのか、と心配する必要はない。『書をステディー町へレディゴー』は、それでいいのだ、と天才バカボンのパパのように、力強くはないがユルく肯定してくれるだろう。
書をステディ町へレディゴー / 安田 謙一,辻井 タカヒロ
書をステディ町へレディゴー
  • 著者:安田 謙一,辻井 タカヒロ
  • 出版社:誠光社
  • 装丁:単行本(255ページ)
  • 発売日:2019-11-30
  • ISBN-10:499111490X
  • ISBN-13:978-4991114908
内容紹介:
バイト帰りにプールで泳いで、古本屋とレコード屋のぞいて、映画館立ち寄って、家でテレビ観ながら今日見聞きしたことを思い出す。音楽と時事ネタと私生活、文学とシモネタと世知辛さ。つなげて、モジッて、オチつけて・・書けた。意味はないけど滋味はある、笑えて学べて役立たない、「ロック漫筆」… もっと読む
バイト帰りにプールで泳いで、古本屋とレコード屋のぞいて、映画館立ち寄って、家でテレビ観ながら今日見聞きしたことを思い出す。音楽と時事ネタと私生活、文学とシモネタと世知辛さ。つなげて、モジッて、オチつけて・・書けた。意味はないけど滋味はある、笑えて学べて役立たない、「ロック漫筆」の集大成。安田謙一・辻井タカヒロの名バッテリーが、雑多な話題を広めのストライクゾーンへとお届けする、「白い名著」ここに誕生。

ローリング・ストーンズとケーシー高峰が、『テレホン人生相談』と『エクソシスト』が、天童よしみとシャッグスが、カフカと「およげ!たいやきくん」が、仲良く同居するコラムの数々を、見事に捕球し、打ち返す4コマ漫画の数々。世知辛い世の中と退屈な生活に、レコードが、テレビが、映画館が、安い飲み屋が、そして共通言語をもった相棒が存在することの喜びをしみじみと噛みしめることのできるコラム約120本。知らない本やレコード、映画をチェックしたり、捜したりしながら読めば数年間はたっぷり楽しめるであろう1冊。

雑誌「CDジャーナル」誌上で2010年から2019年まで連載された「書をステディ町へレディゴー」に、前身連載「ロックンロールストーブリーグ」4回分と、『ビートル・ストーリー』誌上で連載された「ポールがジョージにジョンずにリンゴの絵を描いた」13回分を追加収録。あとがきは夏葉社の島田潤一郎。

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毎日新聞

毎日新聞 2020年2月2日

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