書評
『ブードゥーラウンジ』(ナナロク社)
何だかわからないけど人間って“超強い”
何やってんだかわからない人が集う場所は、俗にヤバい場所と言われがちだが、どうして、そんな人が集っていられる場所はあれこれ豊かに決まってる、と考え方を変えられないのだろう。私はあなたと同じですか、君と僕は仲良くなれますよね、と偽りの同意ばかり繰り返して窮屈になっている日々を、ビリビリに破ってくれる本がこれだ。福岡・北天神にあるライブハウス「ブードゥーラウンジ」に集う人々の群像をすみずみまでほじくり出す。有名な人なんて誰も出てこない。よくわからない人が、よくわからない人と音を鳴らしている。で、誰かが叫んで、誰かが泣いている。
このライブハウスを主戦場とするボギーくんが運営するのは「ヨコチンレーベル」。「どうしても世間の領域から『はみだし』てしまった何かにこそ、美しいものが宿ってるんじゃないか」、だからヨコチン。
世の中に、正しいとされる表現があったとして、そうじゃない表現をすることってロックンロールだけど、マジでロックなのは、正しいとされる表現をぶっ壊して上書きしてヘラヘラ笑い続けることだ。ここに集う連中はそれを信じている。客より舞台にいる人数が多い日があっても、笑って、怒って、寂しがっている。感情が爆発している。
福岡の老人介護施設「よりあい」での日々を綴った『へろへろ』を記した著者による2作目だが、人間を賛美するまなざしだとか、転がっていく人を見たら一緒に転がっていこうとする姿勢だとか、うっかり自分だけが熱くなって全てを忘れてしまう態度だとか、介護施設もライブハウスも同じじゃないかって気がしてくる。
で、一体、これは何の本なんだと思うかもしれない。人間って超強いな、という本だ。
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