前書き

『わかりやすさの罪』(朝日新聞出版)

  • 2020/09/01
わかりやすさの罪 / 武田 砂鉄
わかりやすさの罪
  • 著者:武田 砂鉄
  • 出版社:朝日新聞出版
  • 装丁:単行本(278ページ)
  • 発売日:2020-07-07
  • ISBN-10:4023318760
  • ISBN-13:978-4023318762
内容紹介:
“わかりやすさ”の妄信、あるいは猛進が、私たちの社会にどのような影響を及ぼしているのだろうか。「すぐにわかる!」に頼り続けるメディア、ノウハウを一瞬で伝えたがるビジネス書、「4回泣ける映画」で4回泣く人たち……。「どっち?」との問いに「どっちでもねーよ!」と答えたくなる機会があまり… もっと読む
“わかりやすさ”の妄信、あるいは猛進が、私たちの社会にどのような影響を及ぼしているのだろうか。「すぐにわかる!」に頼り続けるメディア、ノウハウを一瞬で伝えたがるビジネス書、「4回泣ける映画」で4回泣く人たち……。「どっち?」との問いに「どっちでもねーよ!」と答えたくなる機会があまりにも多い日々。私たちはいつだって、どっちでもないはず。納得と共感に溺れる社会で、与えられた選択肢を疑うための一冊。はじめに1 「どっちですか?」の危うさ2 「言葉にできない」3 要約という行為4 「2+3=○」「○+○=5」5 勝手に理解しないで6 理解が混雑する7 「一気にわかる!」必要性8 人心を1分で話すな9 なぜそこで笑ったのか10 なぜ笑うのか、なぜ笑えないのか11 全てを人に届ける12 説明不足13 「コード」にすがる14 ノイズを増やす15 4回泣けます16 コーヒーを吹くかもしれない17 深いって何だろう18 見せかけの優位19 偶然は自分のもの20 わざと雑にする21 そんなこと言ってないのに22 自分に迷わない人たち23 みんなで考えすぎ24 人はいつもぐちゃぐちゃおわりに コロナ禍の「わかりやすさ」の中で

はじめに

個人に向けられる定番の低評価として、「何を考えているかわからない人」というものがあるが、「何を考えているかわかっている人」なんて面白くないでしょう、といつも思う。何を考えているかわからないからこそ、今、何を考えているのかと尋ねたくなる。こんなことを考えているんだよ、という意見を聞き取り、それが自分の意見と異なっていれば、話し合って歩み寄ったり、 結果的に突き放したりする。それが人間という営みの基本形だと思っているのだが、 昨今、どうにも、相手と同じであることを「正解」と規定されることが増え、なおかつ、そこにたどり着くまでのスピードが速ければ速いほど優れている、と思い込まされるようになった。

人に同意を促すためには説明が必要。どうして私がこれを好んでいるのか、だとか、話題になっている社会問題について私が反対している理由はこれ、だとか、時間をかけて説明をする。その時、とにかく、手短によろしくね、わかりやすくお願いね、小難しくしないでね、と要求される。わずかな時でわからせますと力を尽くさなければ、話を聞いてもらえない。あらゆる場面で、短時間で明確な説明ができる人をもてはやすようになった。テレビをつけても活字を読んでも、その基本的な態度が、「忙しい皆さんの手を煩わせることはしません、少しだけ時間をください。このことについて、わかりやすく説明してみせます」ばかりだ。

目の前に、わかりにくいものがある。なぜわかりにくいかといえば、パッと見では、その全体像が見えないからである。凝視したり、裏側に回ってみたり、突っ込んでいったり、持ち上げたり、いくつもの作用で、全体像らしきものがようやく見えてくる。でも、そんなにあれこれやってちゃダメ、と言われる。見取り図や取扱説明書を至急用意するように求められる。そうすると、用意する間に、その人が考えていることが削り取られてしまう。

本書の基となる連載を「わかりやすさの罪」とのタイトルで進めている最中に、池上彰が『わかりやすさの罠』(集英社新書)を出した。書籍としては、本書のほうが後に刊行されることになるので、タィトルを改めようかと悩んだのだが、当該の書を開くと、「これまでの職業人生の中で、私はずっと『どうすればわかりやすくなるか』ということを考えてきました」と始まる。真逆だ。自分はこの本を通じて、「どうすれば『わかりやすさ』から逃れることができるのか」 ということをずっと考えてみた。罠というか、罪だと思っている。「わかりやすさ」の罪について、わかりやすく書いたつもりだが、結果、わかりにくかったとしても、それは罠でも罪でもなく、そもしもあらゆる物事はそう簡単にわかるものではない、そう思っている。
わかりやすさの罪 / 武田 砂鉄
わかりやすさの罪
  • 著者:武田 砂鉄
  • 出版社:朝日新聞出版
  • 装丁:単行本(278ページ)
  • 発売日:2020-07-07
  • ISBN-10:4023318760
  • ISBN-13:978-4023318762
内容紹介:
“わかりやすさ”の妄信、あるいは猛進が、私たちの社会にどのような影響を及ぼしているのだろうか。「すぐにわかる!」に頼り続けるメディア、ノウハウを一瞬で伝えたがるビジネス書、「4回泣ける映画」で4回泣く人たち……。「どっち?」との問いに「どっちでもねーよ!」と答えたくなる機会があまり… もっと読む
“わかりやすさ”の妄信、あるいは猛進が、私たちの社会にどのような影響を及ぼしているのだろうか。「すぐにわかる!」に頼り続けるメディア、ノウハウを一瞬で伝えたがるビジネス書、「4回泣ける映画」で4回泣く人たち……。「どっち?」との問いに「どっちでもねーよ!」と答えたくなる機会があまりにも多い日々。私たちはいつだって、どっちでもないはず。納得と共感に溺れる社会で、与えられた選択肢を疑うための一冊。はじめに1 「どっちですか?」の危うさ2 「言葉にできない」3 要約という行為4 「2+3=○」「○+○=5」5 勝手に理解しないで6 理解が混雑する7 「一気にわかる!」必要性8 人心を1分で話すな9 なぜそこで笑ったのか10 なぜ笑うのか、なぜ笑えないのか11 全てを人に届ける12 説明不足13 「コード」にすがる14 ノイズを増やす15 4回泣けます16 コーヒーを吹くかもしれない17 深いって何だろう18 見せかけの優位19 偶然は自分のもの20 わざと雑にする21 そんなこと言ってないのに22 自分に迷わない人たち23 みんなで考えすぎ24 人はいつもぐちゃぐちゃおわりに コロナ禍の「わかりやすさ」の中で

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