書評
『コーネルの箱』(文藝春秋)
金井美恵子の最新エッセイ集『「競争相手は馬鹿ばかり」の世界へようこそ』を読んでいたら、映像作家ダニエル・シュミットの世界を、ジョゼフ・コーネルのオブジェ作品と重ね合わせて論じている箇所があり、その指摘の鋭さに感じ入ったちょうどその頃、この本が書店に並んだという偶然を指して、読書の愉悦のシンクロニシティと言い切っては牽強付会(けんきょうふかい)にすぎるだろうか。
コーネルといえば、古い雑誌や本、写真、版画といった、誰か他の人の手になるアイテムを自作の箱の中にコラージュした、シュルレアリスティックな手法の作品で知られるアーティスト。
本書は詩人のシミックが、「コーネルが物について行なったのと同じように、すでにある言葉のなかから断片を見つけてきて、それを素材に詩を作りたい」と思い立って書いた、それ自体がコーネルの箱のごとく謎めいていて、象徴的で、ロマンティックな書物なのである。コーネルの日記はいうまでもなく、数多くの詩人や画家たちの言葉を自身の詩のように美しい散文の中にコラージュしながらシミックは、「スケッチもできなかったし油絵も描けなかったし彫刻もできなかった」にもかかわらず、アメリカの偉大な芸術家になったコーネル作品の神髄と、その周辺を、静かにゆったりとたゆたう。性急な解釈や直截な断定とは無縁。親しき仲にも礼儀ありとでもいいたいかのような、シャイで端正なアプローチの仕方が心地よい一冊なのだ。代表的作品も二十四点収録されており、コーネルという不思議な才能の一端に触れることができるのも嬉しい。
【この書評が収録されている書籍】
コーネルといえば、古い雑誌や本、写真、版画といった、誰か他の人の手になるアイテムを自作の箱の中にコラージュした、シュルレアリスティックな手法の作品で知られるアーティスト。
本書は詩人のシミックが、「コーネルが物について行なったのと同じように、すでにある言葉のなかから断片を見つけてきて、それを素材に詩を作りたい」と思い立って書いた、それ自体がコーネルの箱のごとく謎めいていて、象徴的で、ロマンティックな書物なのである。コーネルの日記はいうまでもなく、数多くの詩人や画家たちの言葉を自身の詩のように美しい散文の中にコラージュしながらシミックは、「スケッチもできなかったし油絵も描けなかったし彫刻もできなかった」にもかかわらず、アメリカの偉大な芸術家になったコーネル作品の神髄と、その周辺を、静かにゆったりとたゆたう。性急な解釈や直截な断定とは無縁。親しき仲にも礼儀ありとでもいいたいかのような、シャイで端正なアプローチの仕方が心地よい一冊なのだ。代表的作品も二十四点収録されており、コーネルという不思議な才能の一端に触れることができるのも嬉しい。
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