書評

『やきもち焼きの土器つくり(みすず書房)』(みすず書房)

  • 2017/07/13
やきもち焼きの土器つくり / クロード レヴィ=ストロース
やきもち焼きの土器つくり
  • 著者:クロード レヴィ=ストロース
  • 出版社:みすず書房
  • 装丁:単行本(350ページ)
  • ISBN:462204904X

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神話論理のもつれた糸を解きほぐす手並みの鮮やかさ。そして思考のみずみずしさ。ーレヴィ=ストロースが先年久びさに著した本格的な神話研究書の、待望の翻訳である。ページを繰りながら私は、ほんとうに堪能した。

構造主義人類学の頂点を極めた大冊、『神話論理』全四巻が書かれたのは、二十年ほど前のこと。料理の火の起源をめぐる南北アメリカの神話群を素材にした、前人未踏の業績だった。今回とりあげるのは、もうひとつの火の技術、土器作りの起源をめぐる神話群である。そしてそこから、ヨタカ/ホエザル/ナマケモノといった、神話の「動物素(ゾエーム)」たちがどういう意味場を織りなしているのかを明らかにしていく。

生のものと火を通したもの (神話論理 1) / クロード・レヴィ=ストロース
生のものと火を通したもの (神話論理 1)
  • 著者:クロード・レヴィ=ストロース
  • 出版社:みすず書房
  • 装丁:単行本(538ページ)
  • 発売日:2006-04-14
  • ISBN:4622081512

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レヴィ=ストロースの神話学は、ただでさえ難解とされるうえ、『神話論理』の翻訳が未刊なため、全体像がつかみにくかった。だがうれしいことに、本書はたった一冊で、そのうまい要約になっている。特に神話分析の「基本定式」がどういうものなのか、実例が豊富でよくわかるのがいい。思うにこの定式は一種の比例式で、欠けた項をそれ以外の部分から予測するためのものである。彼はこの操作を、先験的演繹とよぶ。

夜行性で大きく口が裂けたヨタカと、滅多に糞をしないナマケモノ。ここに、口唇における欲望/肛門における保持、の対立が隠れている。この対立が、それ以外のさまざまな対立に展開し、神話群の全体が生み出されていることが明らかになる。これを追っていくだけでも大変スリリングだ。

神話分析は、フロイトの精神分析と似ているようで、根本的に異なるという。フロイトは、性欲という唯一のコードですべてを解読しようとした。一方レヴィ=ストロースは、複数のコードを同等に扱う。それらのコードが「諸項のあいだに関係をうち立てる」ところに、神話の意味作用が現れるという。翻訳も万全で、構造主義の魅力を余すところなくたたえた本書の登場を喜びたい。

【この書評が収録されている書籍】
書評のおしごと―Book Reviews 1983‐2003 / 橋爪 大三郎
書評のおしごと―Book Reviews 1983‐2003
  • 著者:橋爪 大三郎
  • 出版社:海鳥社
  • 装丁:単行本(382ページ)
  • ISBN:4874155421

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やきもち焼きの土器つくり / クロード レヴィ=ストロース
やきもち焼きの土器つくり
  • 著者:クロード レヴィ=ストロース
  • 出版社:みすず書房
  • 装丁:単行本(350ページ)
  • ISBN:462204904X

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初出メディア

日本経済新聞

日本経済新聞 1990年12月9日

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