書評

『遊戯の起源: 遊びと遊戯具はどのようにして生まれたか』(平凡社)

  • 2017/09/01
遊戯の起源: 遊びと遊戯具はどのようにして生まれたか / 増川 宏一
遊戯の起源: 遊びと遊戯具はどのようにして生まれたか
  • 著者:増川 宏一
  • 出版社:平凡社
  • 装丁:単行本(303ページ)
  • 発売日:2017-03-27
  • ISBN-10:4582468217
  • ISBN-13:978-4582468212
内容紹介:
遊戯史研究の第一人者が、考古学・人類学などの研究成果をも駆使し、人間社会を潤す「遊び」の起源に迫る、「遊びの世界人類史」。

競わない遊びから進化した競争

人間は遊ぶ動物であるという説もあるように、子どもの遊戯をはじめ、野球やサッカーなどのスポーツ、ギャンブル、さらには最近の電子ゲームにいたるまで、生活の一部となり、社会経済に大きな影響を与える場合もある。このような遊戯がいつごろ発生したのか、どのような意味を持つのかを実証的に研究したのが本書である。

古代ギリシャの壁画には、戦車競走や舟合戦の様子が描かれている。しかし、それよりも古い文化を伝えているアフリカやブラジルの先住民たちには、鳥のなき声をまねたり、手づかみで魚をとらえる「遊び」が伝わっている。遊びの根源的な姿は、生産活動とは無関係な、ただ体を動かすといったものだった。つまり、「競わない遊び」である。この状態が進化して、やり投げや競走のような、「競う遊び」になったという。従来の研究書が、狩猟などの腕の競い合いから遊びが生まれたとしているのと、ちょうど逆の立場をとっていて、たいへん興味深い。

そのほか、石でつくった人形やサイコロ、ゲーム盤、ガラガラ、ヨーヨーなども世界各地で早くから、ほとんど同時的に発明されていたらしい。人間の考えることはみな同じといえるが、著者によれば、先史時代に出アフリカをなしとげた人類は、せいぜい数百人から数千人にすぎず、DNAが共通しているからだというが、こうした人類学的な視点によって、本書の説得性は高められている。

遊びは私たちの祖先にとって、生活のうるおいであり、活力のもとであったはずだが、現代の遊びがあまりにも肥大化し、商品化しすぎていることを考えざるを得ない。
遊戯の起源: 遊びと遊戯具はどのようにして生まれたか / 増川 宏一
遊戯の起源: 遊びと遊戯具はどのようにして生まれたか
  • 著者:増川 宏一
  • 出版社:平凡社
  • 装丁:単行本(303ページ)
  • 発売日:2017-03-27
  • ISBN-10:4582468217
  • ISBN-13:978-4582468212
内容紹介:
遊戯史研究の第一人者が、考古学・人類学などの研究成果をも駆使し、人間社会を潤す「遊び」の起源に迫る、「遊びの世界人類史」。

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初出メディア

しんぶん赤旗

しんぶん赤旗 2017年4月9日

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