書評

『戯れの魔王』(文藝春秋)

  • 2022/04/22
戯れの魔王 / 篠原 勝之
戯れの魔王
  • 著者:篠原 勝之
  • 出版社:文藝春秋
  • 装丁:単行本(189ページ)
  • 発売日:2018-11-21
  • ISBN-10:4163909354
  • ISBN-13:978-4163909356
内容紹介:
泉鏡花文学賞受賞『骨風』のKUMAさん、待望の最新小説集!オッカサンの死を看取り、蓮の花が開いて散るまでを見守る…「蓮葬り」。毎朝、遙拝してきた甲斐駒ヶ岳の奉仕登山にいどむ…「アマテラスの踵」。白塗りのメイクでマロが率いる舞踏集団の初舞台を踏む…「戯れの魔王」。山岳の作業場に迷い込んだ瀕死の仔猫は助かるのか…「ささらほーさら」。
クマさんこと篠原勝之の短編を集めた小説集。たとえば最初に置かれた「蓮葬(はすおく)り」。もう何十年も「鉄」を溶かしたり叩いたりして暮らしてきた「オレ」と「オッカサン」の話。オッカサンは90歳を超え、最期の時も近い。オレはそんなオッカサンとためらいながらも向きあい、2人の記憶をまさぐり、そうかと思えば外国で鉄のオブジェを作っていた時のことを不意に思い起こしたりする。

記憶と現実とが「蓮」の生育を介して緩くつなげられる。オッカサンの死後、主治医から手渡される証明書に「老衰」と書かれていて、それを「たいへんよくできました」と読むあたり、小説らしい小説、と言えよう。ゲージツ家の手すさびではない、本物の小説。
戯れの魔王 / 篠原 勝之
戯れの魔王
  • 著者:篠原 勝之
  • 出版社:文藝春秋
  • 装丁:単行本(189ページ)
  • 発売日:2018-11-21
  • ISBN-10:4163909354
  • ISBN-13:978-4163909356
内容紹介:
泉鏡花文学賞受賞『骨風』のKUMAさん、待望の最新小説集!オッカサンの死を看取り、蓮の花が開いて散るまでを見守る…「蓮葬り」。毎朝、遙拝してきた甲斐駒ヶ岳の奉仕登山にいどむ…「アマテラスの踵」。白塗りのメイクでマロが率いる舞踏集団の初舞台を踏む…「戯れの魔王」。山岳の作業場に迷い込んだ瀕死の仔猫は助かるのか…「ささらほーさら」。

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初出メディア

日本経済新聞

日本経済新聞 2019年1月10日

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