書評

『うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち』(KADOKAWA)

  • 2017/07/18
うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち / 田中 圭一
うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち
  • 著者:田中 圭一
  • 出版社:KADOKAWA
  • 装丁:単行本(176ページ)
  • 発売日:2017-01-19
  • ISBN-10:4041037085
  • ISBN-13:978-4041037089
内容紹介:
パロディマンガの巨星がマジに描いた、明日は我が身のうつ病脱出コミック!

トンネル脱出

うつ病に悩む人は多い。ぼくのまわりにも何人かいるし、他人事ではない。

田中圭一の『うつヌケ』は、うつ病を真っ暗なトンネルにたとえ、そこから抜け出した人びとに取材したコミックエッセイである。

はじめに著者自身の体験が紹介される。サラリーマンとマンガ家という二つの仕事で忙しく働いていた著者は、転職をきっかけにうつ病になる。「あなたのうつ病は一生もの」ということばで医者に不信感をいだいて悪化。勝手に服薬をやめたり、医者を転々としたりとますます悪化。

トンネル脱出のきっかけは、コンビニで見つけた文庫本だった。うつ病にかかった精神科医が書いたエッセイである。著者は再発と回復を繰り返しながらも、自分の場合は気温の変化が引き金でうつ病になることに気づく。そして、「うつはそのうち完全に治る」と実感するに至る。

ここまではいわば序章。以下、著者が会って聞いた、さまざまな人の「うつヌケ」体験談が続く。

この人もうつ病に苦しんでいたのか、と驚く。ミュージシャンの大槻ケンヂ、AV監督の代々木忠、小説家の宮内悠介、熊谷達也、そして思想家の内田樹も。彼らに共通するのは、多忙さであり、責任感の強さであり、無意識に設定する目標の高さである。

「うつヌケ」のきっかけとなるのも人それぞれ。大槻ケンヂの場合は森田療法との出会いであり、内田樹は合気道を通じて「脳を休ませて身体の声を聞く」ことに気づく。

マンガという表現がテーマにぴったりだ。軽い気持ちでパラパラめくれるのがいい。なんだか効きそう。
うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち / 田中 圭一
うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち
  • 著者:田中 圭一
  • 出版社:KADOKAWA
  • 装丁:単行本(176ページ)
  • 発売日:2017-01-19
  • ISBN-10:4041037085
  • ISBN-13:978-4041037089
内容紹介:
パロディマンガの巨星がマジに描いた、明日は我が身のうつ病脱出コミック!

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初出メディア

週刊朝日

週刊朝日 2017年2月15日

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