『フォトリアルCGで見る 世界のSDGsスマートシティ』(原書房)

未来の都市はどのような姿をしているのか。また、どのようにすれば、地球の生態系へのダメージを最小限に抑えながら、将来の世代のニーズを満たすことができるのか。『フォトリアルCGで見る 世界のSDGsスマートシティ』には世界で進行する40以上の未来都市構想を収録。先駆的な建築家やデザイナーたちが提案する、気候変動、人口密度、インフラ、交通、デジタルカルチャーなどの問題を解決する都市の未来を一挙に紹介します。持続可能な脱炭素都市や、自己充足型都市、トヨタのウーブンシティ、清水建設の深海都市、月面都市まで。

「持続可能」な都市

本書の趣旨は単に超ハイテクな都市を空想して楽しもうというだけではない。いずれも名だたる建築事務所がすでに存在する技術に基づいて構想した具体的なプロジェクトであり、実現まであとわずかというものも少なくない。また、すべてが差し迫った課題によって立ち上げられたプロジェクトでもある。キーワードは「持続可能性」だ。


「SDGs（持続可能な開発目標）」という言葉を日常で見たり聞いたりする機会がますます増えてきた。人類も地球もこのままでは長くは持たないという認識が世界的に共有されつつあるのだろう。世界人口の増加と拡大する都市化、それに伴って進行する環境汚染や地球温暖化、貧困、食糧および土地不足など、今すぐに対処しなければ間に合わない問題が山積みとなっている。そこで不可欠となるのが持続可能性に配慮した優れた都市計画やテクノロジーであり、それらを今注目されているテーマごとにまとめたのが本書なのだ。未来の世界に必要なアイデアが満載されている本書は、人類が現在直面している問題を明らかにしつつ具体的な解決策を示すことで未来への希望を抱かせてくれる。

ウーブンシティなど、日本のプロジェクトも続々と

著者のエリン・グリフィスが建築とデザインを専門とするジャーナリストということもあり、機能だけでなくデザイン的にも優れた都市や建築物が数多く取り上げられている。トヨタの有名な〈ウーヴンシティ〉など、日本のプロジェクトが登場するのも嬉しい。眺めているだけでも楽しいが、著者のジャーナリストらしい端正な解説はこれからの世界に想いを馳せる手引きをしてくれる。日本の読者がそれを楽しむことに貢献できたなら、訳者としてこれ以上ない喜びだ。


［書き手］樋口健二郎（訳者）