書評

『がん消滅の罠 完全寛解の謎』(宝島社)

  • 2017/07/24
【2017年・第15回『このミステリーがすごい!大賞』大賞受賞作】 がん消滅の罠 完全寛解の謎 / 岩木 一麻
【2017年・第15回『このミステリーがすごい!大賞』大賞受賞作】 がん消滅の罠 完全寛解の謎
  • 著者:岩木 一麻
  • 出版社:宝島社
  • 装丁:単行本(325ページ)
  • 発売日:2017-01-12
  • ISBN-10:4800265657
  • ISBN-13:978-4800265654
内容紹介:
治るはずのないがんは、なぜ消滅したのか―余命半年の宣告を受けたがん患者が、生命保険の生前給付金を受け取ると、その直後、病巣がきれいに消え去ってしまう―。連続して起きるがん消失事件は奇跡か、陰謀か。医師・夏目とがん研究者・羽島が謎に挑む!医療本格ミステリー!2017年第15回『このミステリーがすごい!』大賞・大賞受賞作。

このミス大賞受賞作

苦痛さえコントロールできるなら、がんが一番いい死に方だといわれる。余命を宣告されてから死ぬまでの間に、いろいろと準備できるからだ。もっとも、だからといって、発がん性物質をもりもり食べる気にはならない。やっぱり、がんにはなりたくない。

がんで余命宣告を受けた時点でお金が支払われる生命保険がある。では、余命宣告を受けた後で、がんが治ってしまったらどうなるのか。岩木一麻『がん消滅の罠』は、そんな「もしも」を題材にしたミステリーである。

余命半年と宣告された患者の病巣が、生前給付金を受け取った直後に消えてしまう。それだけなら喜ぶべきことだが、連続して4人もとなるとおかしい。たんなる偶然か、それとも新手の保険金詐欺なのか? 患者を担当した医師・夏目と、友人でがん研究者の羽島が謎に挑む。

浮かび上がってきたのは、政財官界のセレブたちが治療を受ける怪しい病院の存在だ。しかし、がんを治したり再発させたり、そんなことが自由にコントロールできるのか。誰が? 何のために? 謎は深まるばかりである。

本作の魅力は、がん治療とトリックとをうまく結びつけたところにある。医療ミステリーであると同時に、謎解きを楽しむ本格ミステリーでもある。がんとは何か、転移や治療法などについても、登場人物の会話というかたちで解説される。最後の最後まで読者を安心させない。

第15回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作。この賞からは、医療ミステリーの旗手、海堂尊がデビューしている。新たなスターの誕生を歓迎したい。
【2017年・第15回『このミステリーがすごい!大賞』大賞受賞作】 がん消滅の罠 完全寛解の謎 / 岩木 一麻
【2017年・第15回『このミステリーがすごい!大賞』大賞受賞作】 がん消滅の罠 完全寛解の謎
  • 著者:岩木 一麻
  • 出版社:宝島社
  • 装丁:単行本(325ページ)
  • 発売日:2017-01-12
  • ISBN-10:4800265657
  • ISBN-13:978-4800265654
内容紹介:
治るはずのないがんは、なぜ消滅したのか―余命半年の宣告を受けたがん患者が、生命保険の生前給付金を受け取ると、その直後、病巣がきれいに消え去ってしまう―。連続して起きるがん消失事件は奇跡か、陰謀か。医師・夏目とがん研究者・羽島が謎に挑む!医療本格ミステリー!2017年第15回『このミステリーがすごい!』大賞・大賞受賞作。

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初出メディア

週刊朝日

週刊朝日 2017年1月31日

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