書評

『恋愛の日本史』(宝島社)

  • 2024/01/22
恋愛の日本史 / 本郷 和人
恋愛の日本史
  • 著者:本郷 和人
  • 出版社:宝島社
  • 装丁:新書(224ページ)
  • 発売日:2023-07-10
  • ISBN-10:4299042972
  • ISBN-13:978-4299042972
内容紹介:
「夜這い」「盆踊りでの乱交」など戦前まで行われていた民俗文化の由来とは? しばしば言われる「性のタブーのない日本」ですが、本当に日本は性に大らかな国と言えるのか。2024年の大河ドラマ『光る君へ』の主役・紫式部と『源氏物語』にも言及しつつ、性愛、恋愛、男女の歴史をひもといていきます。
日本は性におおらかなのか? 日本史が専門の著者の質問だ。答えはイエス。宮本常一ら民俗学者が各地を巡り埋もれた資料を集めた。著者は昔、資料の「土佐源氏」を読み衝撃を受けた。馬喰(ばくろう)の老人が自分の性遍歴を告白して自慢する内容だ。

日本は父系社会でない。昔は妻問い婚で女性に主導権があった。中国の宮廷のような後宮も宦官もなかった。源氏物語をはじめ王朝文学は、そうした背景で花開いたのだ。

仏教が独身主義を持ち込んだ。稚児を愛でる男色文化が蔓延した。武士も家を離れ共同生活するので、男色はありがちだった。大名は跡継ぎを確保するため、側室を置いた。

江戸時代には儒学が普及し、武家社会は窮屈になった。女性は貞淑を求められた。重苦しいイエ制度だ。庶民はまだしも自由だった。江戸は男性過剰の都市で、遊廓が繁盛。お伊勢参りも息抜きの機会だった。

日本の男女のあり方は、儒教どっぷりの中国と違う。キリスト教の性道徳とも別系統だ。日本人のこの感覚は、海外の人びとには理解されにくい。それを踏まえておくのは大切だ。気軽に読める新書だが、しっかりしたワンテーマの一冊である。
恋愛の日本史 / 本郷 和人
恋愛の日本史
  • 著者:本郷 和人
  • 出版社:宝島社
  • 装丁:新書(224ページ)
  • 発売日:2023-07-10
  • ISBN-10:4299042972
  • ISBN-13:978-4299042972
内容紹介:
「夜這い」「盆踊りでの乱交」など戦前まで行われていた民俗文化の由来とは? しばしば言われる「性のタブーのない日本」ですが、本当に日本は性に大らかな国と言えるのか。2024年の大河ドラマ『光る君へ』の主役・紫式部と『源氏物語』にも言及しつつ、性愛、恋愛、男女の歴史をひもといていきます。

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初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2023年11月18日

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