書評

『おじさん仏教』(徳間書店)

  • 2017/08/02
おじさん仏教 / 小池 龍之介
おじさん仏教
  • 著者:小池 龍之介
  • 出版社:徳間書店
  • 装丁:単行本(247ページ)
  • 発売日:2016-11-24
  • ISBN-10:4198642958
  • ISBN-13:978-4198642952
内容紹介:
過去への未練と未来への不安ばかりが募るおじさん。「今、ここ」を生きられず煩悶する全おじさんに、救いの言葉を差し伸べる本!

晩年の死生観

子どものころ、大人は立派だと思っていた。自信たっぷりで、怖いものなさそうで。ところが自分が中高年になってみてわかった。ほんとうの中高年は、不安と後悔と嫉妬と怒りでいっぱいなのだ。

小池龍之介『おじさん仏教』は、若い僧侶が悩める中高年男性に助言する本である。第一部で「おじさん」の具体的な悩みに答え、第二部で仏教理論と悩みの関係を解説する。第三部には蛭子能収との対談を収録。

第一部のお悩み相談がリアルだ。「誰からも評価されていない」と嘆くOA機器会社の50歳。起業して成功した元同僚に嫉妬するIT会社の45歳。妻が大切にしてくれない、家庭での地位はペット以下だとぼやく地方公務員51歳。新橋あたりの居酒屋で、隣のテーブルから聞こえてきそう。

こうした悩みに対して著者は、自分が置かれている状況を直視して相対化する方法をユーモラスに説く。煩悩にどっぷり漬かっているからつらいのである。

ストレスの元は煩悩だ。主要な煩悩は「欲」「怒り」「無知」の三つ。さらに欲の一種として「見」と「慢」。無知とは感覚のセンサーが鈍く、目の前の現実に興味をもたなくなること。いま・ここに集中すれば、煩悩を振り払うことだってできそう。坐禅なんて組めそうにないけれども、つらいとき「これは煩悩だ」と思えば楽になる。仏教は意外と役に立つ。

異色の僧侶として知られる著者は78年生まれ。38歳の若造ならぬ若僧にオレの何がわかるか、と反発するおじさんもいるかもしれない。でも、酒を飲んで暴れたり薬に頼るより、まず一読を。
おじさん仏教 / 小池 龍之介
おじさん仏教
  • 著者:小池 龍之介
  • 出版社:徳間書店
  • 装丁:単行本(247ページ)
  • 発売日:2016-11-24
  • ISBN-10:4198642958
  • ISBN-13:978-4198642952
内容紹介:
過去への未練と未来への不安ばかりが募るおじさん。「今、ここ」を生きられず煩悶する全おじさんに、救いの言葉を差し伸べる本!

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初出メディア

週刊朝日

週刊朝日 2016年12月20日

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