- 著者:佐野 静代
- 出版社:吉川弘文館
- 装丁:単行本(228ページ)
- 発売日:2021-07-20
- ISBN-10:4642059296
- ISBN-13:978-4642059299
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生態系を語るとき、人々の暮らしや生業(なりわい)をどのように捉えるのかという重要な問いを投げかけている。広く生態系を捉えるとき、私たち人類も生態系の一部であると考えるか、人々の手による加工は人為的であると考えるのか。外来植物についても、現在では、侵略的なものかどうかなど、その影響が議論されることが多い。
グローバル化が進む世界の中で、外来植物の移入の可能性も広がっているが、周りに悪影響を及ぼさずに馴染んでいく植物も存在する。外来植物≒悪、在来植物≒善ではなく、それぞれの影響や役割に目を配ることが重要である。
棚田などの里山の景色は、人々の暮らしと生態系が融合した調和景色であり、それを自然と捉えるか、人工と捉えるか。人為的な「自然」の実像と、私たちの心の中にある里山、里湖、里海と。
「在来型の自然と思われてきた日本の里湖・里海の多くは、外来植物の導入に伴って近世後期に確立されたものだった」という結論を著者はあとがきで述べている。
外来植物≒悪、在来植物≒善ではなく、それぞれの影響や役割を科学的、定量的に理解する研究が求められている。ちょうど、琵琶湖岸にはオオバナミズキンバイ、ナガエツルノゲイトウなどの侵略的外来生物が侵入し、その面積を拡大させてきた。前者は観賞用の植物であったが、急激に繁茂し、在来植物の生育環境を壊変させてきた。ところが最近では、本種を食べる虫が出現し始めた。
生態系には、生態系を保とうとする復元力みたいなものがあるようにも思える。その復元力を超える壊変は避けなければならないが、ある程度の影響の場合、各生態系が持つ力によって復元していくのかもしれない。そのいろいろな角度の境界を知ることが大切である。
[書き手] 田中 周平(たなか しゅうへい・京都大学地球環境学堂准教授)