演劇の「故郷」構成する戯曲
小説家・小野正嗣が初めて挑戦した戯曲が、彼の故郷の大分で上演される前に、単行本になって我々の手元に届いた。小野にとって故郷は重要なテーマだ。それは本当の生地の大分を指すと同時に、彼が5年を過ごしたパリのある家をも意味している。彼が住んでいた家では、複数の移民や難民を受け入れてきた、という。つまり、故郷とは、小野にとってはまず、誰かを歓待する場所のことなのだ。
戯曲には「ヨロコビ」という名の少女、「オジイ」と「オバア」、そして村の衆が登場する。オノマトペの多い台詞が、どのように演劇の「故郷」を構成するのか、どうしても芝居を観てみたい。そんな気になる一篇。