書評

『哲学大図鑑』(三省堂)

  • 2017/09/15
哲学大図鑑 / ウィル・バッキンガム,ダグラス・バーナム,クライヴ・ヒル, ピーター・J・キング,ジョン・マレンボン, マーカス・ウィークス
哲学大図鑑
  • 著者:ウィル・バッキンガム,ダグラス・バーナム,クライヴ・ヒル, ピーター・J・キング,ジョン・マレンボン, マーカス・ウィークス
  • 翻訳:小須田 健
  • 出版社:三省堂
  • 装丁:大型本(352ページ)
  • 発売日:2012-01-01
  • ISBN-10:4385162239
  • ISBN-13:978-4385162232
内容紹介:
わかりやすい図解で100を超える哲学理論を簡潔に解説した哲学入門。

授業の黒板のように思想の地図をさし示す

カフェの本棚に『世界で一番美しい元素図鑑』(創元社)があった。iPadのアプリ版でも話題になった本だ。ページをめくると「世界で一番」がけっして誇大表示ではないとわかった。カフェで何を食べたのか覚えていないほど感動した。

こんどは『哲学大図鑑』というのが評判だと聞いたので、さっそく購入した。古代から現代まで、哲学者たちが時代を追って紹介されている。その数、107人は、元素の118と近い(巻末の哲学者人名録に59人)。

「図鑑」というだけあって、構成がおもしろい。まずその哲学者の代表的なフレーズと生年没年。ニーチェだと「人間とは、のりこえられるべきなにかだ」とある。そしてイメージイラスト(ニーチェの場合は脳みそが透けている人間の横顔)。「その哲学的背景」という囲みには、「部門:倫理学、手法:実存主義」とあり、先駆となった思想や与えた影響を「前史」「後史」で紹介している。どんなにすごい哲学者も、突然変異のごとくあらわれたのではなく、誰かの影響を受けている。目玉はマインドマップ。キーワードなどが線で囲まれ、矢印でつながれている。授業の黒板みたいで楽しい。

解説の文章もユニークだ。その哲学者の生涯や全体像を伝えるのではなく、思想の核の部分だけピンポイントで、しかもけっこう丁寧に説明している。だから「事典」ではなく「図鑑」なのか。

著者は6人。編集協力者が2人。全員はじめて見る名前だ。イギリスの大学教員などらしい。

人選はちょっと独特だ。たとえばジジェクやクリステヴァは本編に入っているけれども、ドゥルーズが巻末の人名録でのみというのは、これがイギリス的評価なのか。本編に日本人が2人だけなのはいいとしても、それが田辺元と和辻哲郎というのはどうなのか。田辺はゆずるとしても、和辻より九鬼周造でしょう…….とかなんとか考えるのも、こういう本を眺める楽しみのひとつである。
哲学大図鑑 / ウィル・バッキンガム,ダグラス・バーナム,クライヴ・ヒル, ピーター・J・キング,ジョン・マレンボン, マーカス・ウィークス
哲学大図鑑
  • 著者:ウィル・バッキンガム,ダグラス・バーナム,クライヴ・ヒル, ピーター・J・キング,ジョン・マレンボン, マーカス・ウィークス
  • 翻訳:小須田 健
  • 出版社:三省堂
  • 装丁:大型本(352ページ)
  • 発売日:2012-01-01
  • ISBN-10:4385162239
  • ISBN-13:978-4385162232
内容紹介:
わかりやすい図解で100を超える哲学理論を簡潔に解説した哲学入門。

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

初出メディア

週刊朝日

週刊朝日 2012年3月23日

  • 週に1度お届けする書評ダイジェスト!
  • 「新しい書評のあり方」を探すALL REVIEWSのファンクラブ
関連記事
永江 朗の書評/解説/選評
ページトップへ