書評
『不機嫌な姫とブルックナー団』(講談社)
垢抜けない天才を面白く
ゴシック文学研究者として名高い著者によるエンタメ小説。極上と言える面白さが光る。図書館に勤める「ゆたき」はブルックナーを偏愛するアラサー女子。あるコンサート会場で、「ブルックナー団」を名乗るオタク3人組に声をかけられる。
小説の構造は、ゆたきの作曲家への思いと、「ブルックナー団」の一人、武田による「ブルックナー伝(未完)」が交互に記述される形になっている。
著者の真の狙いは、同時代人の作曲家(たとえばブラームス)と比較してもどこか垢抜けない、だがどう考えても天才としか形容できない奇人ブルックナーの生涯を、平易に面白く語り直すことにある、とみた。
生きるのが下手な人たちへのエールでもある。