書評

『パリ南西東北』(月曜社)

  • 2024/06/08
パリ南西東北 / ブレーズ・サンドラール
パリ南西東北
  • 著者:ブレーズ・サンドラール
  • 翻訳:昼間 賢
  • 出版社:月曜社
  • 装丁:単行本(189ページ)
  • 発売日:2011-11-01
  • ISBN-10:4901477889
  • ISBN-13:978-4901477888
内容紹介:
仏語圏スイスを飛び出し、欧米各地を渡り歩いたブレーズ・サンドラールは、フランスの首都を突き抜けて、どこでもない場所、すなわち“郊外”へと身を投げた。無個性の灰のうちに熱い熾火の生を… もっと読む
仏語圏スイスを飛び出し、欧米各地を渡り歩いたブレーズ・サンドラールは、フランスの首都を突き抜けて、どこでもない場所、すなわち“郊外”へと身を投げた。無個性の灰のうちに熱い熾火の生を読み、呪詛の詩法で時空を超える詩人の呼吸が、いま新しい日本語でよみがえる。写真家ロベール・ドアノーとの共作『パリ郊外』(1949年刊)の序文として書かれながら独自の価値をもつ、ルポルタージュ文学の傑作。

郊外像の源流知る手がかりに

ブレーズ・サンドラールという詩人がいた。生まれた国スイスを飛び出し、欧米を渡り歩いたが、サンドラールが居を構えたのが、パリの郊外だった。戦後すぐのことだ。

人々は電車でパリに通勤するようになった。古き良き街並(まちなみ)は消えつつあった。だが、そこには人情と呼んで差し支えない温(ぬく)もりがあった。そんなパリ郊外の風景を、一人の写真家が鮮やかに切り取った。ロベール・ドアノーである。

サンドラールはドアノーの写真集に文章を寄せるように言われる。そして書いたのが、この本に収められた諸テキスト。

「平日の列車は楽しくない。ラッシュの時間帯にサン=ラザール駅に行ってみるといい。朝は職場に出かけ、夕方には不満で疲れ切ったまま同じ路線を利用する郊外人たちでいっぱいだ。ここはどこの国なのか? アリ塚のようだ」

手厳しい。「世界全体が病んでいる」とか平気で書く。皮肉屋である。だが、時代の証言として大変貴重だと思う。

1990年代以後、パリの郊外を語る言葉は紋切り型になった。暴力、ゲットー化、荒廃する団地。郊外像の源流を求める人にはうってつけの本。昼間賢訳。
パリ南西東北 / ブレーズ・サンドラール
パリ南西東北
  • 著者:ブレーズ・サンドラール
  • 翻訳:昼間 賢
  • 出版社:月曜社
  • 装丁:単行本(189ページ)
  • 発売日:2011-11-01
  • ISBN-10:4901477889
  • ISBN-13:978-4901477888
内容紹介:
仏語圏スイスを飛び出し、欧米各地を渡り歩いたブレーズ・サンドラールは、フランスの首都を突き抜けて、どこでもない場所、すなわち“郊外”へと身を投げた。無個性の灰のうちに熱い熾火の生を… もっと読む
仏語圏スイスを飛び出し、欧米各地を渡り歩いたブレーズ・サンドラールは、フランスの首都を突き抜けて、どこでもない場所、すなわち“郊外”へと身を投げた。無個性の灰のうちに熱い熾火の生を読み、呪詛の詩法で時空を超える詩人の呼吸が、いま新しい日本語でよみがえる。写真家ロベール・ドアノーとの共作『パリ郊外』(1949年刊)の序文として書かれながら独自の価値をもつ、ルポルタージュ文学の傑作。

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初出メディア

日本経済新聞

日本経済新聞 2011年11月30日

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