書評

『鬱の本』(点滅社)

  • 2024/08/25
鬱の本 / 点滅社編集部
鬱の本
  • 著者:点滅社編集部
  • 出版社:点滅社
  • 装丁:単行本(195ページ)
  • 発売日:2023-12-05
  • ISBN-10:4991271932
  • ISBN-13:978-4991271939
内容紹介:
鬱のときに読んだ本。憂鬱になると思い出す本。まるで鬱のような本。84名の方による、「鬱」と「本」をめぐるエッセイ集。本が読めないときに。(夏葉社さまの『冬の本』にインスパイアされ… もっと読む
鬱のときに読んだ本。憂鬱になると思い出す本。まるで鬱のような本。
84名の方による、「鬱」と「本」をめぐるエッセイ集。本が読めないときに。

(夏葉社さまの『冬の本』にインスパイアされてつくった作品です)

執筆者一覧

青木真兵 青木海青子 安達茉莉子 荒木健太 飯島誠 池田彩乃 石井あらた 市村柚芽 海猫沢めろん 大谷崇 大塚久生 大槻ケンヂ 大橋裕之 大原扁理 荻原魚雷 落合加依子 柿木将平 頭木弘樹 梶本時代 勝山実 上篠翔 切通理作 こだま 小見山転子 ゴム製のユウヤ 佐々木健太郎 笹田峻彰 佐藤友哉 左藤玲朗 篠田里香 柴野琳々子 島田潤一郎 下川リヲ 菅原海春 杉作J太郎 鈴木太一 髙橋麻也 髙橋涼馬 高村友也 瀧波ユカリ 滝本竜彦 タダジュン 谷川俊太郎 丹治史彦 第二灯台守 輝輔 展翅零 トナカイ 鳥羽和久 友川カズキ 友部正人 豊田道倫 鳥さんの瞼 中山亜弓 永井祐 七野ワビせん 西崎憲 野口理恵 初谷むい 東直子 姫乃たま 緋山重 平野拓也 Pippo pha ふぉにまる 古宮大志 増田みず子 枡野浩一 町田康 マツ 松下育男 miku maeda みささぎ 水落利亜 水野しず 無 森千咲 森野花菜 山﨑裕史 山崎ナオコーラ 山下賢二 屋良朝哉 湯島はじめ


まえがき

この本は、「毎日を憂鬱に生きている人に寄り添いたい」という気持ちからつくりました。どこからめくってもよくて、一編が1000文字程度、さらにテーマが「鬱」ならば、読んでいる数分の間だけでも、ほんのちょっと心が落ち着く本になるのではいかと思いました。

病気のうつに限らず、日常にある憂鬱、思春期の頃の鬱屈など、様々な「鬱」のかたちを84名の方に取り上げてもらっています。

「鬱」と「本」をくっつけたのは、本の力を信じているからです。1冊の本として『鬱の本』を楽しんでいただくとともに、無数にある「鬱の本」を知るきっかけになれば、生きることが少し楽になるかもしれないという思いがあります。

この本が、あなたにとっての小さなお守りになれば、こんなにうれしいことはありません。あなたの生活がうまくいきますように。

※本書は、うつや、うつのような症状の方のためのマニュアル本や啓発本ではありません。そのため、例えば「うつ病の具体的な治療方法」などは書かれておりません。ご了承ください。
あれこれうまくいかない、と思う日がある。そういう日は、自分以外の人が、あれこれうまくいっている人に見える。見えるだけなのだろう、と思いながらも、「実際どうなんですか?」と聞いてまわるわけにはいかないので、自分と他人、自分と社会の距離が開いてしまう。

その後、スッと元に戻る日もあれば、なかなか戻らない日もある。誰だって、長年、自分と付き合っているのに、自分と付き合うのが簡単ではないのはどうしてなのか。

『鬱の本』(屋良朝哉、小室有矢、今関綾佳編・点滅社・1980円)は、病気としての鬱に限らず、「日常にある憂鬱、思春期の頃の鬱屈など、様々な『鬱』のかたちを84名の方に取り上げてもらって」いる本。見開き2ページで完結する短いエッセイが続いていく構成は、まさに「実際どうなんですか?」との問いかけに答えてくれるかのよう。

自分の沈み方を知っている人がいれば、どうしてこうなるのか、困惑の最中の人もいる。青木真兵が「本来、人間は『鬱』をベースに社会を構築するべきなのです」と書くように、増える情報や更新される技術に対して、「便利になった!」と興奮することが求められる社会に飲み込まれるのではなく、うつむきながら自分の足元を見ていたい。

こんな社会と距離をとって、「少し鬱になった視線が必要だ」「あらゆる悩みが正しい」と海猫沢めろんが書く。悩む=幸せから遠ざかる、ではない。悩みなんか消してしまえ、忘れようよ、という誘いは、幸せへの近道とは限らない。それぞれが抱えているわだかまりを、そう簡単に抜き取ろうとするな。この時代、ほとんど暴力みたいなお節介が多すぎる。

森野花菜が「いつまで歩けばいいのかわからなくなったとき、鞄(かばん)の中の本はそっと私を立ち止まらせてくれる」とエッセイを締めくくる。それはまるでこの本の紹介文のよう。キラリと光っているわけではない文章にいくつも会える。光っていないのに目が合う。気づいたら、本に対して前のめりになっていた。
鬱の本 / 点滅社編集部
鬱の本
  • 著者:点滅社編集部
  • 出版社:点滅社
  • 装丁:単行本(195ページ)
  • 発売日:2023-12-05
  • ISBN-10:4991271932
  • ISBN-13:978-4991271939
内容紹介:
鬱のときに読んだ本。憂鬱になると思い出す本。まるで鬱のような本。84名の方による、「鬱」と「本」をめぐるエッセイ集。本が読めないときに。(夏葉社さまの『冬の本』にインスパイアされ… もっと読む
鬱のときに読んだ本。憂鬱になると思い出す本。まるで鬱のような本。
84名の方による、「鬱」と「本」をめぐるエッセイ集。本が読めないときに。

(夏葉社さまの『冬の本』にインスパイアされてつくった作品です)

執筆者一覧

青木真兵 青木海青子 安達茉莉子 荒木健太 飯島誠 池田彩乃 石井あらた 市村柚芽 海猫沢めろん 大谷崇 大塚久生 大槻ケンヂ 大橋裕之 大原扁理 荻原魚雷 落合加依子 柿木将平 頭木弘樹 梶本時代 勝山実 上篠翔 切通理作 こだま 小見山転子 ゴム製のユウヤ 佐々木健太郎 笹田峻彰 佐藤友哉 左藤玲朗 篠田里香 柴野琳々子 島田潤一郎 下川リヲ 菅原海春 杉作J太郎 鈴木太一 髙橋麻也 髙橋涼馬 高村友也 瀧波ユカリ 滝本竜彦 タダジュン 谷川俊太郎 丹治史彦 第二灯台守 輝輔 展翅零 トナカイ 鳥羽和久 友川カズキ 友部正人 豊田道倫 鳥さんの瞼 中山亜弓 永井祐 七野ワビせん 西崎憲 野口理恵 初谷むい 東直子 姫乃たま 緋山重 平野拓也 Pippo pha ふぉにまる 古宮大志 増田みず子 枡野浩一 町田康 マツ 松下育男 miku maeda みささぎ 水落利亜 水野しず 無 森千咲 森野花菜 山﨑裕史 山崎ナオコーラ 山下賢二 屋良朝哉 湯島はじめ


まえがき

この本は、「毎日を憂鬱に生きている人に寄り添いたい」という気持ちからつくりました。どこからめくってもよくて、一編が1000文字程度、さらにテーマが「鬱」ならば、読んでいる数分の間だけでも、ほんのちょっと心が落ち着く本になるのではいかと思いました。

病気のうつに限らず、日常にある憂鬱、思春期の頃の鬱屈など、様々な「鬱」のかたちを84名の方に取り上げてもらっています。

「鬱」と「本」をくっつけたのは、本の力を信じているからです。1冊の本として『鬱の本』を楽しんでいただくとともに、無数にある「鬱の本」を知るきっかけになれば、生きることが少し楽になるかもしれないという思いがあります。

この本が、あなたにとっての小さなお守りになれば、こんなにうれしいことはありません。あなたの生活がうまくいきますように。

※本書は、うつや、うつのような症状の方のためのマニュアル本や啓発本ではありません。そのため、例えば「うつ病の具体的な治療方法」などは書かれておりません。ご了承ください。

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初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2024年3月2日

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