書評

『決定版カフカ短編集』(新潮社)

  • 2024/09/30
決定版カフカ短編集 / フランツ・カフカ
決定版カフカ短編集
  • 著者:フランツ・カフカ
  • 編集:頭木 弘樹
  • 出版社:新潮社
  • 装丁:文庫(256ページ)
  • 発売日:2024-04-24
  • ISBN-10:4102071067
  • ISBN-13:978-4102071069
内容紹介:
人間存在の不条理を描いた、20世紀を代表する巨星カフカの決定版短編集。この物語はまるで本物の誕生のように脂や粘液で蔽われてぼくのなかから生れてきた——。(カフカ1913年2月11日の日記よ… もっと読む
人間存在の不条理を描いた、20世紀を代表する巨星カフカの決定版短編集。
この物語はまるで本物の誕生のように脂や粘液で蔽われてぼくのなかから生れてきた——。
(カフカ1913年2月11日の日記より)

父親との対峙を描く「判決」、特殊な拷問器具に取り憑かれた士官を取材する「流刑地にて」、檻の中での断食を見世物にする男の生涯を追う「断食芸人」……。遺言で原稿の焼却を頼むほど自身の作品への評価が厳しかったカフカ。その中でも自己評価の高かった15編を厳選した、カフカ短編集の決定版。

判決
火夫
流刑地にて
田舎医者
断食芸人
父の気がかり
天井桟敷にて
最初の悩み
万里の長城
掟の問題
市の紋章
寓意について
ポセイドーン
猟師グラフス
独身者の不幸
『決定版カフカ全集』全12巻から選りすぐった短編15作を集めた。最初は「判決」。一九一二年にひと晩で書いた第一作だ。次は「火夫」。未完に終わった小説『アメリカ』の冒頭部分だ。この二作と「変身」は≪脂や粘液で蔽(おお)われてぼくのなかから生れてきた≫三つ子だという。「流刑地にて」はおぞましい処刑機械の話。「万里の長城」や「掟の問題」は理性が届かないこの世界の不条理や暗部に届く独特の作風だ。

編者の頭木氏は13年の闘病生活の間、『決定版』の≪全巻を…100回以上は読ん≫だ。カフカの作品はカフカにしか書けない。そして彼個人を超えた崇高な世界が臨在する。同じ文庫からの『カフカ断片集』を読むとなおその思いが深まる。

一八八三年に生まれ四○歳で病死したユダヤ人のカフカ。生前ほぼ無名で、死後に遺稿が出版され評価が高まった。異様で狂った二○世紀の象徴だ。日本でも新潮社の果敢な全集刊行で多くの読者を獲得した。

孤独な無償の営為が文学の現場であること。文学は、個として生きる人間の苦悩や悲惨や栄光や喜びの器であること。素粒子物理学の実験のような厳粛な作品が並ぶ文庫版だ。
決定版カフカ短編集 / フランツ・カフカ
決定版カフカ短編集
  • 著者:フランツ・カフカ
  • 編集:頭木 弘樹
  • 出版社:新潮社
  • 装丁:文庫(256ページ)
  • 発売日:2024-04-24
  • ISBN-10:4102071067
  • ISBN-13:978-4102071069
内容紹介:
人間存在の不条理を描いた、20世紀を代表する巨星カフカの決定版短編集。この物語はまるで本物の誕生のように脂や粘液で蔽われてぼくのなかから生れてきた——。(カフカ1913年2月11日の日記よ… もっと読む
人間存在の不条理を描いた、20世紀を代表する巨星カフカの決定版短編集。
この物語はまるで本物の誕生のように脂や粘液で蔽われてぼくのなかから生れてきた——。
(カフカ1913年2月11日の日記より)

父親との対峙を描く「判決」、特殊な拷問器具に取り憑かれた士官を取材する「流刑地にて」、檻の中での断食を見世物にする男の生涯を追う「断食芸人」……。遺言で原稿の焼却を頼むほど自身の作品への評価が厳しかったカフカ。その中でも自己評価の高かった15編を厳選した、カフカ短編集の決定版。

判決
火夫
流刑地にて
田舎医者
断食芸人
父の気がかり
天井桟敷にて
最初の悩み
万里の長城
掟の問題
市の紋章
寓意について
ポセイドーン
猟師グラフス
独身者の不幸

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初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2024年7月20日

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