コロナ禍が世界でパニックを起こす中、3カ月で4144%以上という収益率をあげたアメリカの投資顧問会社がある。なぜそんなことが可能だったのか。彼らは人びとの不幸を利用する悪徳集団なのか。逆張りのはったり屋なのか。本書は米国経済紙記者によるノンフィクション。
彼らの考え方が興味深い。未来は予測不能。ブラックマンデーしかり、911同時多発テロしかり。予測はできないが、かすかな兆しから危機を読み取って、最悪の事態に備えることができる。たとえばコロナ禍では感染の広がりが指数関数的であることを理解していたか否かが決め手になった。
何が起きるかわからない。だからこそ予防原則に従うべきだと彼らは言う。つまり、公共や地球環境に害をもたらすリスクが疑われる場合、確実に安全だとわかるまではその行動や施策を止める。たとえば地球温暖化を促進する行為や遺伝子組み換えなどだ。危機につけ込んで肥大する政府や企業の行動をナオミ・クラインはショック・ドクトリン(惨事便乗型資本主義)と呼んだが、本書はその裏バージョンか。