書評
『白樫の樹の下で』(文藝春秋)
今年度の、松本清張賞の受賞作である。
小普請組の御家人、村上登は提灯(ちょうちん)貼りの内職で家計を助けながら、佐和山道場で代稽古を務めている。
登は、町人ながら錬尚館で目録を取るろうそく問屋の巳乃介(みのすけ)から、一竿子(いっかんし)忠綱の名刀を預かってほしいと懇願される。登はいやいや引き受けるが、これが一つの鍵になる。
そのころ、「大膾(おおなます)」と呼ばれる凄腕(すごうで)の、しかも残虐非道な辻斬(ぎ)りが、世上を騒がせていた。登も巳乃介も、道場仲間の仁志兵輔も青木昇平も、その犯人捜しに巻き込まれていく。このあたり、ミステリー的な味わいもあって、なかなか読ませる。さらに、兵輔の妹佳絵を巡る登と昇平の確執があり、それが辻斬り事件にも関わってくる。
後半、関係者が次つぎと、それもあっけなく死んでしまうのは、いささか作りすぎの感がある。しかし文章は読みやすく、時代考証もしっかりしているので、今後に期待できそうな新人だ。
小普請組の御家人、村上登は提灯(ちょうちん)貼りの内職で家計を助けながら、佐和山道場で代稽古を務めている。
登は、町人ながら錬尚館で目録を取るろうそく問屋の巳乃介(みのすけ)から、一竿子(いっかんし)忠綱の名刀を預かってほしいと懇願される。登はいやいや引き受けるが、これが一つの鍵になる。
そのころ、「大膾(おおなます)」と呼ばれる凄腕(すごうで)の、しかも残虐非道な辻斬(ぎ)りが、世上を騒がせていた。登も巳乃介も、道場仲間の仁志兵輔も青木昇平も、その犯人捜しに巻き込まれていく。このあたり、ミステリー的な味わいもあって、なかなか読ませる。さらに、兵輔の妹佳絵を巡る登と昇平の確執があり、それが辻斬り事件にも関わってくる。
後半、関係者が次つぎと、それもあっけなく死んでしまうのは、いささか作りすぎの感がある。しかし文章は読みやすく、時代考証もしっかりしているので、今後に期待できそうな新人だ。
朝日新聞 2011年7月31日
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