書評

『白樫の樹の下で』(文藝春秋)

  • 2017/09/06
白樫の樹の下で / 青山 文平
白樫の樹の下で
  • 著者:青山 文平
  • 出版社:文藝春秋
  • 装丁:単行本(254ページ)
  • 発売日:2011-06-24
  • ISBN-10:4163807209
  • ISBN-13:978-4163807201
内容紹介:
いまだ人を斬ったことがない貧乏御家人が刀を抜くとき、なにかが起こる。第18回松本清張賞受賞作。
今年度の、松本清張賞の受賞作である。

小普請組の御家人、村上登は提灯(ちょうちん)貼りの内職で家計を助けながら、佐和山道場で代稽古を務めている。

登は、町人ながら錬尚館で目録を取るろうそく問屋の巳乃介(みのすけ)から、一竿子(いっかんし)忠綱の名刀を預かってほしいと懇願される。登はいやいや引き受けるが、これが一つの鍵になる。

そのころ、「大膾(おおなます)」と呼ばれる凄腕(すごうで)の、しかも残虐非道な辻斬(ぎ)りが、世上を騒がせていた。登も巳乃介も、道場仲間の仁志兵輔も青木昇平も、その犯人捜しに巻き込まれていく。このあたり、ミステリー的な味わいもあって、なかなか読ませる。さらに、兵輔の妹佳絵を巡る登と昇平の確執があり、それが辻斬り事件にも関わってくる。

後半、関係者が次つぎと、それもあっけなく死んでしまうのは、いささか作りすぎの感がある。しかし文章は読みやすく、時代考証もしっかりしているので、今後に期待できそうな新人だ。
白樫の樹の下で / 青山 文平
白樫の樹の下で
  • 著者:青山 文平
  • 出版社:文藝春秋
  • 装丁:単行本(254ページ)
  • 発売日:2011-06-24
  • ISBN-10:4163807209
  • ISBN-13:978-4163807201
内容紹介:
いまだ人を斬ったことがない貧乏御家人が刀を抜くとき、なにかが起こる。第18回松本清張賞受賞作。

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初出メディア

朝日新聞

朝日新聞 2011年7月31日

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