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『小津安二郎発言クロニクル 1903~1963』(三四郎書館)

  • 2024/11/28
小津安二郎発言クロニクル 1903~1963 /
小津安二郎発言クロニクル 1903~1963
  • 編集:小津安二郎発言クロニクルをつくる会+三四郎書館
  • 出版社:三四郎書館
  • 装丁:単行本(670ページ)
  • 発売日:2024-11-25
  • ISBN-10:4991299330
  • ISBN-13:978-4991299339
内容紹介:
本書は、『東京物語』『晩春』『麦秋』などで世界的に著名な映画監督、小津安二郎のクロノロジカルな発言集です。書籍、映画専門誌、一般雑誌、新聞(一般紙・スポーツ新聞)、日記、手紙、動… もっと読む
本書は、『東京物語』『晩春』『麦秋』などで世界的に著名な映画監督、小津安二郎のクロノロジカルな発言集です。書籍、映画専門誌、一般雑誌、新聞(一般紙・スポーツ新聞)、日記、手紙、動画、録音などに残された発言、テキストを、その誕生から没年に至る「60年間」に及ぶ軌跡を、年代別、通時的に集成しました。

小津監督は「映画界には言葉が多過ぎるよ」という批判的な発言を残しましたが、映画評論家やジャーナリストは、小津の独創的な映画作品や人格的な魅力に吸引されるとともに、その生の言葉を求め、多くの座談会、対談、インタビュー等の取材が行われました。

その結果、映画監督としては異例なまでに多くの「発言」や「言葉」が世界に残されることになりました。

小津監督はきわめてサービス精神の旺盛な映画作家であったと同時に、映画を愛することに伴った責任感を強く意識した表現者でもあり、ジャーナリズムの要望や期待に多く応えました。

小津監督の周囲には、小津監督を温かく支える家族、親族、友人、小津組というプロフェッショナルな製作集団、脚本家、一流の俳優、映画評論家、研究者、文学者、画家などの芸術家がいました。

このような仲間たちの信頼と愛情の環が、小津監督の発言や言葉を保存し、残すことを大きく支えました。

本書は、その遺産を基礎に、小津監督の発言の軌跡を年代順に集成した発言の年代記=クロニクルです。映画史的な時代背景なども各年代の冒頭の梗概部にまとめ、時代の流れの中に小津監督の発言を置いて味わえます。

また、小津監督と同じ時間を共有した関係者の発言も随所に織り込み、より多角的な視点から小津監督の人柄や人生観、映画作家としての考え方が理解できるように構成しました。
『東京物語』『晩春』『麦秋』などで世界的に著名な映画監督、小津安二郎は生前、「映画界には言葉が多過ぎる」と述べた一方、映画評論家やジャーナリストは、その生の言葉を求めて多くの座談会、対談、インタビュー等の取材が行われました。その結果、映画監督としては異例なまでに多くの「発言」や「言葉」が残されました。このたび、そうした書籍、映画専門誌、一般雑誌、新聞(一般紙・スポーツ新聞)、日記、手紙、動画、録音などに残された発言やテキストを年代別・通時的に集成し、映画史的な時代背景などの梗概を付した書籍『小津安二郎発言クロニクル 1903~1963』(三四郎書館)が刊行。時代的な文脈の中で彼のその時々の発言を知り、味わうことができる本書の「はじめに(凡例に代えて)」をここにお届けします。

OZU=小津の60年、発言の軌跡を縦走する

初めて『秋刀魚の味』を観たとき、いままで観た映画とは異質な含みが画調の中にあることにショックを受けました。清澄な哀感漂う斎藤高順氏の美しい主題曲に惹き込まれつつ画面を見ていると、その話の筋やセリフ、演技、背景という明確な表現、いわば「映画の骨格」は、それ自体で完結することはありませんでした。話の筋、セリフ、演技、背景は、膨大な含み、余剰、余韻によって支えられているかのようでした。一体、このユニークな作品を創った小津安二郎とは、どのような考え方をもった表現者だったのか? どのような人生観、芸術観、教養、美意識を持ち、どのような生き方、経験を重ねた表現者だったのか?

その映画作品に魅了された多くの人たちが持つだろう、素朴な疑問、関心、好奇心に、応えられるような〝小津監督のクロノジカルな発言集〟を作りたいと思ったのが、この企画の発端でありモチーフでもありました。とりわけ、若い世代、新しく小津を知った映画ファン、これから何かの機会に小津映画に出遭うだろう、未来の世代に向けて本書を編集しました。小津安二郎は、映画監督としては、規格外なまでに多くの論及、解明の対象となっています。とりわけ、蓮實重彦氏の『監督 小津安二郎』は、小津映画のもつ自由な魅力を、多くの映画ファンに伝え、その鑑賞の間口を広げてくれました。

しかし、残念なことですが、現在、小津自身の言葉に、本格的に触れられる書籍は、新刊としては流通していないのが現状です。古書市場には、小津の発言やテキストを蒐集した田中真澄氏の労作『小津安二郎全発言〈1933 ~ 1945〉』(泰流社)と『小津安二郎戦後語録集成』(フィルムアート社)がありますが、現在、一般のファンが手に取るには、少し敷居が高く、もはや古典的な基礎文献になっていると感じました。本書は、この二書を基礎として、初めて企画自体が成立するものです。この二つの労作に代わることはできませんが、その入り口になるような著作を目指しました。

小津は多くの発言やテキストを映画の専門誌はもとより、一般雑誌、新聞、スポーツ新聞、書籍、レコード(録音)、日記等に数多く残した、サービス精神の極めて旺盛な映画作家でした。本書は、小津が各媒体に残した発言・テキストを通時的に編集した年代記=クロニクルという体裁をとっています。多彩な小津自身の発言やテキスト、同じ時間を共有した第三者の発言・テキストを抽出し、時間系列の中に布置してみたとき、どんな印象が迫って来るのか? そんな期待感を込めながら、発言やテキストを集めてみました。

次に、本書の編集の基本的なコンセプトを「凡例」のような形で、下記に簡単に羅列してみます。

一、小津安二郎は、明治三十六年(一九〇三)十二月十二日に生誕し、昭和三十八年(一九六三)の誕生日と同じ日付、十二月十二日に逝去しました。その生涯は六十年に及びます。本書は、各年度ごとに、発表された主要な発言、テキストを網羅しました(一部、その発言した年代を移動させて記載した例もあります。とりわけ、いまだ無名だった頃を「回想」した発言・テキストは、その相当する年代に掲載しました)。
二、小津の発言は、数人の対談、二人での対話として、雑誌に掲載された例が多くあります。本書では、小津の発言だけを対談の中から抽出して掲載しました。独立した内容として理解できる発言を抽出し、選択しました。対談者の発言が不在だと理解できない場合、あるいは理解がより容易になる場合、対談者の発言を[□□□]としてゴチック体で文中に表記しました(この発言は簡略化しました)。
三、発言・テキストの内容を補足する場合には、[注、□□□]のように、ゴチック体で文中に表記しました。
四、小津の発言・テキストを、より多角的に理解するために、「第三者の発言・テキスト」を小津の類似する発言・テキストの中に適宜、挿入しました。「第三者の発言・テキスト」は、小津の発言・テキストと区別するために、発言の冒頭部に[□□□談]のように、その名前を記した他、発言・テキストの背景に網掛けをしました。
五、現代の読者が自然に読めるように、適宜、表記は現代的な漢字、送り仮名に変更しました。同様に、句読点等も、現代の読者の読みやすさを優先し、適宜、変更しました。また、小津の発言やテキストの冒頭部には、「小見出し」を入れました。日記からの引用文については、その雰囲気を壊したくなく、小見出しを入れませんでした。ただし、出征中の日記や手紙は、当時の状況を詳細に物語る唯一の資料でもあり、また、心覚え以上の記述となっているために、小見出しを付けました。

[書き手]
小津安二郎発言クロニクルをつくる会+三四郎書館
小津安二郎発言クロニクル 1903~1963 /
小津安二郎発言クロニクル 1903~1963
  • 編集:小津安二郎発言クロニクルをつくる会+三四郎書館
  • 出版社:三四郎書館
  • 装丁:単行本(670ページ)
  • 発売日:2024-11-25
  • ISBN-10:4991299330
  • ISBN-13:978-4991299339
内容紹介:
本書は、『東京物語』『晩春』『麦秋』などで世界的に著名な映画監督、小津安二郎のクロノロジカルな発言集です。書籍、映画専門誌、一般雑誌、新聞(一般紙・スポーツ新聞)、日記、手紙、動… もっと読む
本書は、『東京物語』『晩春』『麦秋』などで世界的に著名な映画監督、小津安二郎のクロノロジカルな発言集です。書籍、映画専門誌、一般雑誌、新聞(一般紙・スポーツ新聞)、日記、手紙、動画、録音などに残された発言、テキストを、その誕生から没年に至る「60年間」に及ぶ軌跡を、年代別、通時的に集成しました。

小津監督は「映画界には言葉が多過ぎるよ」という批判的な発言を残しましたが、映画評論家やジャーナリストは、小津の独創的な映画作品や人格的な魅力に吸引されるとともに、その生の言葉を求め、多くの座談会、対談、インタビュー等の取材が行われました。

その結果、映画監督としては異例なまでに多くの「発言」や「言葉」が世界に残されることになりました。

小津監督はきわめてサービス精神の旺盛な映画作家であったと同時に、映画を愛することに伴った責任感を強く意識した表現者でもあり、ジャーナリズムの要望や期待に多く応えました。

小津監督の周囲には、小津監督を温かく支える家族、親族、友人、小津組というプロフェッショナルな製作集団、脚本家、一流の俳優、映画評論家、研究者、文学者、画家などの芸術家がいました。

このような仲間たちの信頼と愛情の環が、小津監督の発言や言葉を保存し、残すことを大きく支えました。

本書は、その遺産を基礎に、小津監督の発言の軌跡を年代順に集成した発言の年代記=クロニクルです。映画史的な時代背景なども各年代の冒頭の梗概部にまとめ、時代の流れの中に小津監督の発言を置いて味わえます。

また、小津監督と同じ時間を共有した関係者の発言も随所に織り込み、より多角的な視点から小津監督の人柄や人生観、映画作家としての考え方が理解できるように構成しました。

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