書評

『アッシリア全史-都市国家から世界帝国までの1400年』(中央公論新社)

  • 2025/04/08
アッシリア全史-都市国家から世界帝国までの1400年 / 小林 登志子
アッシリア全史-都市国家から世界帝国までの1400年
  • 著者:小林 登志子
  • 出版社:中央公論新社
  • 装丁:新書(352ページ)
  • 発売日:2025-01-22
  • ISBN-10:4121028414
  • ISBN-13:978-4121028419
内容紹介:
アッシリアは、イスラエルの民を虜囚にし、敵対民族を残酷に処刑したとして、『旧約聖書』では悪役に描かれる。だがその実像はバビロニアの先進文明に学び、長きにわたって栄えた個性的な国だ… もっと読む
アッシリアは、イスラエルの民を虜囚にし、敵対民族を残酷に処刑したとして、『旧約聖書』では悪役に描かれる。
だがその実像はバビロニアの先進文明に学び、長きにわたって栄えた個性的な国だ。 紀元前2000年に誕生した小さな都市国家が他国に隷従しつつも、シャルマネセル3世、サルゴン2世らの治世に勢力を拡大、世界帝国となるが、急速に衰微し、前609年に瓦解する。
その盛衰を軍事・宗教・交易など多角的に描く。
長年、夏の休暇をヨーロッパで過ごしてきたせいで、ロンドン大学内の研究所に近い大英博物館は昼休みの散歩道だった。1階の左奥にあるアッシリア回廊は訪れるたびに、その壮観さに圧倒されるほどだ。アッシュル・バニパル王の獅子狩りや馬上で弓ひく姿は勇ましい。でも、戦場は嫌い、狩猟は好きだったらしい。

前二〇〇〇年ごろ、小さな都市国家として誕生したアッシリアは、他国に隷従しつつも勢力を拡大し、前八世紀半ばには世界帝国になった。イスラエルの民を虐待したせいで、『旧約聖書』では悪役として描かれている。真の姿はどうだったのか。

前八世紀後半から本格化したアッシリア帝国の領土拡大は、戦場でも先頭に立つサルゴン二世の治世に絶頂期を迎えた。後に敵の罠に落ち、惨殺されたばかりか、遺骸を回収できなかったという。葬儀や供養のない死者の霊は悪霊になると恐れられていたせいか、息子で後継者のセンナケリブは「サルゴンの子」とは言わなかったらしい。同王は親征を重ね有能であったが、歴史と伝統のあるバビロンを破壊したことで悪名を立てられた。その八〇年後に衰弱しあっけなく滅亡した。
アッシリア全史-都市国家から世界帝国までの1400年 / 小林 登志子
アッシリア全史-都市国家から世界帝国までの1400年
  • 著者:小林 登志子
  • 出版社:中央公論新社
  • 装丁:新書(352ページ)
  • 発売日:2025-01-22
  • ISBN-10:4121028414
  • ISBN-13:978-4121028419
内容紹介:
アッシリアは、イスラエルの民を虜囚にし、敵対民族を残酷に処刑したとして、『旧約聖書』では悪役に描かれる。だがその実像はバビロニアの先進文明に学び、長きにわたって栄えた個性的な国だ… もっと読む
アッシリアは、イスラエルの民を虜囚にし、敵対民族を残酷に処刑したとして、『旧約聖書』では悪役に描かれる。
だがその実像はバビロニアの先進文明に学び、長きにわたって栄えた個性的な国だ。 紀元前2000年に誕生した小さな都市国家が他国に隷従しつつも、シャルマネセル3世、サルゴン2世らの治世に勢力を拡大、世界帝国となるが、急速に衰微し、前609年に瓦解する。
その盛衰を軍事・宗教・交易など多角的に描く。

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初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2025年2月8日

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