書評

『たった1日で声まで良くなる話し方の教科書』(東洋経済新報社)

  • 2017/08/07
たった1日で声まで良くなる話し方の教科書 / 魚住 りえ
たった1日で声まで良くなる話し方の教科書
  • 著者:魚住 りえ
  • 出版社:東洋経済新報社
  • 装丁:単行本(217ページ)
  • 発売日:2015-08-07
  • ISBN:4492045767
内容紹介:
たった50のコツで、仕事も人間関係も驚くほど上手くいく!20年以上のキャリアで培った「伝わる話し方」の全スキルを初公開!

感情で相手をコントロール

会話術、コミュニケーションスキルの本が売れている。かつては、鉄板のスピーチネタのようなものが求められたが、いまどきはコミュニケーションそのものが論じられている。

本書は、フリーアナウンサーとして活躍する魚住りえによる会話やスピーチの指南術。

「腹式呼吸」や口のまわりの筋肉をほぐすといった「トレーニング」によって「新しい声」を手に入れようといったアドバイスや「抑揚」をつけるスピーチ術など、相手に伝わる話し方の実践的な手法が書かれている。内容はきまじめ。著者の人柄なのだろう。

同じベストセラーでも阿川佐和子『聞く力』には、サプライズがあった。阿川は質問を事前に考えない。代わりに話をよく聞くことで質問が浮かんでくるという。なるほど。一方、アナウンサーの吉田尚記が書いた『なぜ、この人と話をすると楽になるのか』は、先入観を持てと教える。誤解を晴らすために相手は饒舌(じょうぜつ)になる。それでコミュニケーションは活発化する。これもサプライズだ。

比べると本書は、訓練と反復が中心で実直過ぎる内容……、いや、サプライズはあった。それは「相づちをあえて声にしない」「相づちは打たず、黙って笑顔でうなずく」という技術。リズムが一定の相づちは、人に不快感を与える場合があるという。おや、身に覚えがある。

こちらの伝え方、しぐさの印象で相手からの返答は変わる。そこがコミュニケーションの本質だ。著者は「感情はシンクロする」と説く。タクシーの運転手に、低くゆっくり話しかけたら、「シリアスな悩み相談」をされたという著者のエピソードは、それを示している。

会話は内容ではない。感情の出し方で相手をコントロールする技である。よく読むと、少し怖い本である。
たった1日で声まで良くなる話し方の教科書 / 魚住 りえ
たった1日で声まで良くなる話し方の教科書
  • 著者:魚住 りえ
  • 出版社:東洋経済新報社
  • 装丁:単行本(217ページ)
  • 発売日:2015-08-07
  • ISBN:4492045767
内容紹介:
たった50のコツで、仕事も人間関係も驚くほど上手くいく!20年以上のキャリアで培った「伝わる話し方」の全スキルを初公開!

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初出メディア

朝日新聞

朝日新聞 2015年11月29日

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