書評

『伝え方が9割』(ダイヤモンド社)

  • 2017/10/12
伝え方が9割 / 佐々木 圭一
伝え方が9割
  • 著者:佐々木 圭一
  • 出版社:ダイヤモンド社
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(212ページ)
  • 発売日:2013-03-01
  • ISBN-10:4478017212
  • ISBN-13:978-4478017210
内容紹介:
なぜ、伝え方で結果が変わるのか?この本で学べば、あなたのコトバが一瞬で強くなり、人生が変わります。

オバマ演説に通じる技法

たった二つのことしか書かれていない本である。だが、学べることはとても多い。

著者は国際的な広告の賞を受賞し、Jポップの歌詞なども手がけるコピーライターである。この本が述べる二つの技術のひとつ目は、「相手のメリット」を踏まえた話し方の技術だ。

例えば「後方のお客さま、前のお客さまが出られるまで、お席でお待ちください」という機内アナウンス。これが「後方のお客さま、お時間がかかってしまうので、ごゆっくり、お支度ください」になると、がらっと印象は変わる。前者のアナウンスに、人はいらいらするが、後者であれば納得して従ってしまうだろう。自分の都合を押しつける場合でも、言い方を変えることで、人の心理の持ち様を変えるのだ。

もうひとつは、言葉の印象を強める技術だ。例えば、「これは、あなたの勝利だ」というメッセージを「これは私の勝利ではない。あなたの勝利だ」と、一文頭に付け加えることで、言葉のインパクトを高めることができる。付け加えるのは、対になる言葉、反対の意味を持つ言葉。「ギャップ」をうまく利用する。ちなみに、この言葉はオバマ大統領のものだ。演説上手の秘密は、ここにあった。

どちらも単純な手法である。わざわざ1冊にまとめるほどのものではない。だが、料理のレシピとはそういうもの。作り方や材料を見せられると、なんてことなく見えるが、それはレシピを見たから言えること。後出しじゃんけんでしかない。またレシピを知ったからといって、うまく作れるかどうかは別問題。技量やセンスが問われる。誰でもレシピだけで優秀なコピーライターになれるわけではない。

ちなみに本原稿の冒頭の一文は、本書のテクニックであえて強調してみたもの。でき映えのほどはいかがなものでしょう?
伝え方が9割 / 佐々木 圭一
伝え方が9割
  • 著者:佐々木 圭一
  • 出版社:ダイヤモンド社
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(212ページ)
  • 発売日:2013-03-01
  • ISBN-10:4478017212
  • ISBN-13:978-4478017210
内容紹介:
なぜ、伝え方で結果が変わるのか?この本で学べば、あなたのコトバが一瞬で強くなり、人生が変わります。

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初出メディア

朝日新聞

朝日新聞 2013年6月16日

朝日新聞デジタルは朝日新聞のニュースサイトです。政治、経済、社会、国際、スポーツ、カルチャー、サイエンスなどの速報ニュースに加え、教育、医療、環境、ファッション、車などの話題や写真も。2012年にアサヒ・コムからブランド名を変更しました。

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