書評

『流される』(文藝春秋)

  • 2019/06/12
流される / 小林 信彦
流される
  • 著者:小林 信彦
  • 出版社:文藝春秋
  • 装丁:単行本(284ページ)
  • ISBN:416380840X
内容紹介:
山の手・青山で工場を営んだ母方の祖父との交流を軸に、往時の東京に生きる"私"の、時代と人生への諦念と進取の志を活写する。

祖父への屈折した意識を淡々と

本編は『東京少年』『日本橋バビロン』に続く、自伝的長編の第三部に当たる。著者はここで、若いころ沖電気に在籍した母方の祖父、高宮信三を描こうと試みる。

思春期の一時期を、青山にある母の実家で過ごした著者は、信三の人となりに親しく接した。ここに描かれる信三は、家人や周囲の人びとから敬意を払われつつ、なんとなく煙たがられるという、奇妙な存在である。

著者自身も、信三に用を頼まれたり、外出の供を求められたりすると、半ばうっとうしいような、半ばうれしいような、複雑な気持ちになる。その屈折した意識が、さめた筆致で淡々とつづられる。

人物描写に精彩があり、中でも素性の怪しい滝本なる男は、すこぶる小説的な人物に描かれている。

詰まるところ著者は、祖父に対する模糊(もこ)とした心情を、あらためて検証するために自己を語り、そこに祖父の面影を見いだそうとした、と思われる。
流される / 小林 信彦
流される
  • 著者:小林 信彦
  • 出版社:文藝春秋
  • 装丁:単行本(284ページ)
  • ISBN:416380840X
内容紹介:
山の手・青山で工場を営んだ母方の祖父との交流を軸に、往時の東京に生きる"私"の、時代と人生への諦念と進取の志を活写する。

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初出メディア

朝日新聞

朝日新聞 2011年11月6日

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