書評
『魔力の女』(講談社)
トヨザキ的評価軸:
「金の斧(親を質に入れても買って読め)」
「銀の斧(図書館で借りられたら読めば―)」
「鉄の斧(ブックオフで100円で売っていても読むべからず)」
そりゃ、愛すべき小説ではありますよ。わたしだって嫌いじゃござんせん。けど、この手のトンデモミステリーをベストもの企画で挙げちゃダメですよ。他に挙げるべき傑作はいくらだってあるんですから。いや、どんな話かと申しますとね――。
さて、ここから思いっきりネタバレしますんで、『魔力の女』を読もうと思ってる方は目を通さないで下さいましね。
主人公は妻と娘を愛する真面目な実業家ジョン。彼の前にある日、十年前に強姦&絞殺された元恋人マロリーしか知り得ない過去をちらつかせる、肉感的な美女イヴが現れるんですの。でもって「わたしはマロリーよ」なんて囁きかけますの。もちろん、ジョンは信じません。けど、下半身はとっても正直。辛抱たまらず、イヴを抱いてしまいます。どうしてイヴは、マロリーとジョンしか知らない情報を持っているのか。読者は小説の半ば過ぎまでは、ジョンと共にイヴの”陰謀”を暴くべく、いろいろ推理を重ねてみるわけです。つまり、通常のミステリーとして読もうとするわけです。ところが、そのイヴが何者かによって殺されてからの展開に脱力。だって、イヴが再三主張していたとおり、彼女はマロリーの魂を本当に宿していたってことが明らかにされるんですから。
はあぁ~? ってなもんですよ。そんな安易な設定でいいなら、推理力いらねーじゃんよ。でも、ここからはちょっと◎。なんと、マロリーが自分の魂を他の人間に転生させるために使う手段がセックスなんですよー。それはかなり斬新でしょ。マロリーがイヴを媒介にジョンの共同経営者(男)の体に乗り移ってからの展開は爆笑もの。キワモノ感一二〇%充填、波動砲発射! んな感じなんですの。で、そういう設定ゆえにこの小説にはHなシーンがてんこ盛り。たしかに「週刊現代」を読むオヤジが喜びそうな内容なんですの。そんな奇天烈さは評価しつつも、しかし、やっぱり“金の斧”は差し上げられません。それじゃ真面目にミステリー書いてる作家が可哀想すぎですもん。
【この書評が収録されている書籍】
「金の斧(親を質に入れても買って読め)」
「銀の斧(図書館で借りられたら読めば―)」
「鉄の斧(ブックオフで100円で売っていても読むべからず)」
オヤジが喜ぶキワモノ感一二〇%のトンデモミステリー
「週刊現代」の《二〇〇五年度ベストエンターテインメント五十冊》という企画の結果を見て、びっくり! グレッグ・アイルズの『魔力の女』が海外ミステリーの第三位に入ってんだもん(ちなみに第四位はフィリップ・クローデルの『リンさんの小さな子』なんですが、ミステリー評論家がいくら「叙述ミステリー」とか言い張っても、これはミステリーなんかじゃございません。やめて下さいます? この傑作をちっぽけなジャンルに押し込むのは)。そりゃ、愛すべき小説ではありますよ。わたしだって嫌いじゃござんせん。けど、この手のトンデモミステリーをベストもの企画で挙げちゃダメですよ。他に挙げるべき傑作はいくらだってあるんですから。いや、どんな話かと申しますとね――。
さて、ここから思いっきりネタバレしますんで、『魔力の女』を読もうと思ってる方は目を通さないで下さいましね。
主人公は妻と娘を愛する真面目な実業家ジョン。彼の前にある日、十年前に強姦&絞殺された元恋人マロリーしか知り得ない過去をちらつかせる、肉感的な美女イヴが現れるんですの。でもって「わたしはマロリーよ」なんて囁きかけますの。もちろん、ジョンは信じません。けど、下半身はとっても正直。辛抱たまらず、イヴを抱いてしまいます。どうしてイヴは、マロリーとジョンしか知らない情報を持っているのか。読者は小説の半ば過ぎまでは、ジョンと共にイヴの”陰謀”を暴くべく、いろいろ推理を重ねてみるわけです。つまり、通常のミステリーとして読もうとするわけです。ところが、そのイヴが何者かによって殺されてからの展開に脱力。だって、イヴが再三主張していたとおり、彼女はマロリーの魂を本当に宿していたってことが明らかにされるんですから。
はあぁ~? ってなもんですよ。そんな安易な設定でいいなら、推理力いらねーじゃんよ。でも、ここからはちょっと◎。なんと、マロリーが自分の魂を他の人間に転生させるために使う手段がセックスなんですよー。それはかなり斬新でしょ。マロリーがイヴを媒介にジョンの共同経営者(男)の体に乗り移ってからの展開は爆笑もの。キワモノ感一二〇%充填、波動砲発射! んな感じなんですの。で、そういう設定ゆえにこの小説にはHなシーンがてんこ盛り。たしかに「週刊現代」を読むオヤジが喜びそうな内容なんですの。そんな奇天烈さは評価しつつも、しかし、やっぱり“金の斧”は差し上げられません。それじゃ真面目にミステリー書いてる作家が可哀想すぎですもん。
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