書評

『読めない遺言書』(双葉社)

  • 2017/07/08
読めない遺言書 / 深山 亮
読めない遺言書
  • 著者:深山 亮
  • 出版社:双葉社
  • 装丁:単行本(312ページ)
  • 発売日:2012-05-16
  • ISBN-10:4575237728
  • ISBN-13:978-4575237726
内容紹介:
平凡な教師の竹原は、ある日、警察から父の孤独死を知らされる。いつか我が家に帰ってくると思っていた父。だが、見つかった遺言書は"全遺産を小井戸広美に遺贈する"という、見ず知らずの人物に宛てられた信じがたいものだった。家族を捨てた事への憤りとやりきれなさを胸に広美を追い始めた途端、尾行、盗撮、放火と、立て続けに事件に巻き込まれ-。竹原は遺言書を握りしめ、父が残した「謎」を追う。緻密な構成と劇的な展開が導く、驚愕のラスト。珠玉の長編推理小説。

独白の挿入が独特のリズムに

著者は、2年前の〈小説推理新人賞〉の受賞者で、本書が初めての長編になる(ALL REVIEWS事務局注:本書評執筆時期は2012年)。

新人とはいえ、並なみならぬ筆力の持ち主で、こなれた語り口は読みやすく、長さを感じさせない。本業は司法書士とのことだが、その経験がよく生かされている。

中学教師竹原は、義絶状態にあった父の死を知らされ、独り暮らしをしていたアパートへ、遺品の整理に行く。竹原が高校生のころ、大衆食堂を経営していた父は、客と争って相手を傷つけ、刑務所にはいるはめになった。それ以来息子と、没交渉のままだったのだ。

遺品の中に、公証人立ち会いのもとに作られた、遺書が見つかる。そこには、全財産を小井戸広美に遺贈する、と書かれていた。竹原には心当たりのない女で、書き込まれた生年月日からすると、自分より三つも若い。亡父に、若い愛人がいたのかと思い、竹原は複雑な気持ちになる。

教師として、不登校児の家を訪ねたり、問題児の相手をしたりと、日常業務をこなしながら、記載された住所を頼りに、広美や2人の立ち会い証人の素性を、調べていく。

このあたりは、いかにもミステリーらしい運びで、読み手の興味をそらさない。教え子とのやりとりも、生きいきとして臨場感がある。せりふとせりふのあいだに、本音とも韜晦(とうかい)ともつかぬ独白が挿入され、それが独特のリズムを生んでいて、なかなかおもしろい。一人称小説にもかかわらず、「私は……」という主語を極力少なくし、主人公の存在感を軽くすることで、逆に読者の感情移入を促す、味な手管を使っている。

純粋のミステリーではないが、広美の正体については二転、三転する仕掛けがある。竹原が、しだいに広美に引かれていく過程にも、無理がない。

結末は、ある程度予測がつくものの、読後感のよい爽やかな小説だ。
読めない遺言書 / 深山 亮
読めない遺言書
  • 著者:深山 亮
  • 出版社:双葉社
  • 装丁:単行本(312ページ)
  • 発売日:2012-05-16
  • ISBN-10:4575237728
  • ISBN-13:978-4575237726
内容紹介:
平凡な教師の竹原は、ある日、警察から父の孤独死を知らされる。いつか我が家に帰ってくると思っていた父。だが、見つかった遺言書は"全遺産を小井戸広美に遺贈する"という、見ず知らずの人物に宛てられた信じがたいものだった。家族を捨てた事への憤りとやりきれなさを胸に広美を追い始めた途端、尾行、盗撮、放火と、立て続けに事件に巻き込まれ-。竹原は遺言書を握りしめ、父が残した「謎」を追う。緻密な構成と劇的な展開が導く、驚愕のラスト。珠玉の長編推理小説。

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初出メディア

朝日新聞

朝日新聞 2012年7月8日

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