書評
『死神の精度』(文藝春秋)
トヨザキ的評価軸:
◎「金の斧(親を質に入れても買って読め)」
「銀の斧(図書館で借りられたら読めば―)」
「鉄の斧(ブックオフで100円で売っていても読むべからず)」
で、粘着質の上にせっかちなオデは早くも第百三十四回直木賞受賞作を決定いたしましたの(ALL REVIEWS事務局注:本書評執筆時期は2005年)。伊坂幸太郎『死神の精度』。これまで三度候補に挙がり、そのたびに一定の評価は受けながらも受賞を先送りにされてきた伊坂さんですが、死神を語り手においたこの新シリーズで、めでたく百五十八人目の直木賞作家となるはず。『花まんま』が獲れるなら、当社比推定百二十八倍は獲れるはずなんであります。
読後感爽快な表題作ほか、ハードボイルド風味あり、本格ミステリーの大ネタのひとつ、嵐の山荘風味あり、恋愛小説風味あり、ロードノベル風味あり、人情噺風味ありと、さまざまに趣向をこらした六つの物語を収めた連作短篇集。ある物語の登場人物が、別の物語の中にちょっとだけ顔をのぞかせるという伊坂作品ファンならお馴染みの仕掛けが、最後に置かれた「死神対老女」でしみじみ系感動へと読者を導くという構成も見事なので、収録順どおりに読んでいくのをおすすめします。
上層部から命じられるまま、ある人物の調査を一週間程度行って死を実行するのに適しているかどうかを判断し、よほどのことがない限りは「可」の報告をするのが仕事の死神の造型が◎。たとえば「年貢の納め時」という言葉を聞いて、「年貢制度は今もあるのか?」なんて答える頓珍漢ぶりが得も言われぬユーモアをかもす、クールなのにちょっとズレてるキャラクターになっているのです。死を扱いながら、哀しみだけに落とし込まない伊坂さんの軽妙な筆致が素晴らしい傑作シリーズの誕生。これでも直木賞を獲れなかったら? ……デスノートに選考委員の名前を書く書く書く。
[後記=皆さんもこぞんじのとおり、伊坂さんはいまだに直木賞を受賞しておられません。なんで?]
【この書評が収録されている書籍】
◎「金の斧(親を質に入れても買って読め)」
「銀の斧(図書館で借りられたら読めば―)」
「鉄の斧(ブックオフで100円で売っていても読むべからず)」
せっかちなオデは早くも次回の直木賞候補を決定いたしました!
第百三十三回直木賞の選考にいまだ納得がいかない粘着質なオデ。朱川湊人『花まんま』が悪いわけじゃないんです。ハートウォーミングな手堅い短篇集にしあがっておりましょうよ。けど、一番最初の投票で古川日出男『ベルカ、吠えないのか?』を落とすってどーゆーこと?「全体的に小粒だという印象が否めなかった」って、ケンゾーは言うけど、現代史を軍用犬の系譜に重ねて描いたベルカのどこが小粒なんスか? どうすりゃ大粒になるんスか? 場当たりな発言ぶっこいてんじゃございませんことよ。あと、賞関係者から漏れ聞くところによれば、渡辺淳一は「この小説は犬はやたら出てくるけど、女がいないね」って否定したんだって? ズン、てめえ……。『愛の流刑地』が単行本化された暁には、派手なキャンペーン張ってさしあげますんで、首を洗って待ってて下さいまし。で、粘着質の上にせっかちなオデは早くも第百三十四回直木賞受賞作を決定いたしましたの(ALL REVIEWS事務局注:本書評執筆時期は2005年)。伊坂幸太郎『死神の精度』。これまで三度候補に挙がり、そのたびに一定の評価は受けながらも受賞を先送りにされてきた伊坂さんですが、死神を語り手においたこの新シリーズで、めでたく百五十八人目の直木賞作家となるはず。『花まんま』が獲れるなら、当社比推定百二十八倍は獲れるはずなんであります。
読後感爽快な表題作ほか、ハードボイルド風味あり、本格ミステリーの大ネタのひとつ、嵐の山荘風味あり、恋愛小説風味あり、ロードノベル風味あり、人情噺風味ありと、さまざまに趣向をこらした六つの物語を収めた連作短篇集。ある物語の登場人物が、別の物語の中にちょっとだけ顔をのぞかせるという伊坂作品ファンならお馴染みの仕掛けが、最後に置かれた「死神対老女」でしみじみ系感動へと読者を導くという構成も見事なので、収録順どおりに読んでいくのをおすすめします。
上層部から命じられるまま、ある人物の調査を一週間程度行って死を実行するのに適しているかどうかを判断し、よほどのことがない限りは「可」の報告をするのが仕事の死神の造型が◎。たとえば「年貢の納め時」という言葉を聞いて、「年貢制度は今もあるのか?」なんて答える頓珍漢ぶりが得も言われぬユーモアをかもす、クールなのにちょっとズレてるキャラクターになっているのです。死を扱いながら、哀しみだけに落とし込まない伊坂さんの軽妙な筆致が素晴らしい傑作シリーズの誕生。これでも直木賞を獲れなかったら? ……デスノートに選考委員の名前を書く書く書く。
[後記=皆さんもこぞんじのとおり、伊坂さんはいまだに直木賞を受賞しておられません。なんで?]
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