1970年、大分県生まれ。小説家、仏語文学研究者。「水に埋もれる墓」で朝日新人文学賞、『にぎやかな湾に背負われた船』で三島由紀夫賞、『九年前の祈り』で芥川龍之介賞受賞。訳書にV・S・ナイポール『ミゲル・ストリート』(小沢自然との共訳)、ポール・ニザン「アデン、アラビア」ほか。〈プロフィール写真 (c)講談社…もっと読む
- 『とうもろこしの乙女、あるいは七つの悪夢』(河出書房新社)小野 正嗣
少女の狂気と日常のゆがみフランスのゴンクール賞作家に「好きな作家は?」と尋ねると、真っ先にあがったのがオーツだった。長いキャリアを持ち、ノ…
書評 - 『燃焼のための習作』(講談社)小野 正嗣
寄り添う言葉に耳を傾けて 〈透明性〉に取り憑(つ)かれた社会では、〈謎〉は解明されるためだけにしか存在しないかのようだ。だから、すぐに正解…
書評 - 『翻訳に遊ぶ』(岩波書店)小野 正嗣
言葉をつなぐ橋ができるまで 翻訳者ほど文学に奉仕する者はいない。異なる言葉を生きる書き手と読者をつなぐ大切な架け橋。橋から見える風景にひた…
対談・鼎談 - 『墓地の書』(松籟社)小野 正嗣
言葉遊びからタレ出す現実 サムコ・ターレ、ウンコターレ。日曜の朝からごめんくさい。スロヴァキアの地方都市コマールノで、バックミラーつきの荷…
書評 - 『ブルックリン・フォリーズ』(新潮社)小野 正嗣
上機嫌な筆致で語る愚行の物語本作の主人公にして語り手ネイサンは、大病、退職、離婚ののち、故郷ブルックリンに戻ってくる。時間を持て余し、「人…
書評 - 『七夜物語』(朝日新聞出版)小野 正嗣
現実とつながる「夜の世界」へ 川上弘美の文章には風が通(かよ)っているといつも思っていた。改行や丸みを帯びた平仮名が多用されているから? ち…
書評 - 『黄金の少年、エメラルドの少女』(河出書房新社)小野 正嗣
社会のひずみ映し、魂に触れる本書は、村上春樹も受賞したフランク・オコナー国際短編賞の一回目の受賞者であり、いまや国際的評価の高い中国系英語…
書評 - 『わたしがいなかった街で』(新潮社)小野 正嗣
「いま、ここ」で感じる不思議さ主人公の砂羽は、大阪出身の30代半ばのバツイチ女性。東京の世田谷に暮らし、小さな会社に非正規社員として勤めてい…
書評 - 『アンネ・フランクについて語るときに僕たちの語ること』(新潮社)小野 正嗣
生還者は「人間的」になったのか艱難(かんなん)汝(なんじ)を玉にす。だが、途方もない災厄を経験した者はその分だけ人格者になれる、とナイーブ…
書評 - 『ヘルプ 上 心がつなぐストーリー』(集英社)小野 正嗣
声なき者の声で、境界線越える60年代前半のアメリカのミシシッピ州。2人の女性の出会いが物語の核となる。白人の裕福な家庭で家政婦、つまり「ヘル…
書評 - 『人生と運命 1』(みすず書房)小野 正嗣
戦争に揺れる人々、背後に広がる闇まず喝采したい。20世紀文学という巨大な山脈の最高峰の一つがついに翻訳されたのだから! これは、第2次世界大戦…
書評 - 『タイガーズ・ワイフ』(新潮社)小野 正嗣
勇猛な想像力で普遍性もつ異郷 読後、吠(ほ)えたくなった。あまりにも悲しいから。なのに腹が立つほどパワフルで魅惑的だから。 作者のテア・オブ…
書評 - 『無声映画のシーン』(ヴィレッジブックス)小野 正嗣
写真から甦る、忘れえぬ風景 スペインの作家がある日、北部の一地方の鉱山が閉鎖されることを知る。そこは彼が少年の頃に10年ほど暮らした山間の町…
解説 - 『爪と目』(新潮社)小野 正嗣
「あなた」が気づかない欲望人体を覆う表皮のうち特別な存在が二つある。爪と目である。前者は自由な両手の指先を保護し、後者からは外界の情報の8…
書評 - 『われらが背きし者』(岩波書店)小野 正嗣
スパイ小説、語りに仕掛けオックスフォードの元教員ペリーは彼の恋人で弁護士のゲイルと訪れたカリブ海のリゾート地で、ロシア人の富豪ディマからテ…
書評 - 『ことり』(朝日新聞出版)小野 正嗣
片隅に生きる慎ましい存在たち 我々は小鳥のさえずりを美しいと聴き入っても、その声を発する一羽一羽の物語を想像するまでには至らない。小鳥たち…
書評 - 『2666』(白水社)小野 正嗣
小説を怪物にする死と詩情と俗悪さ 〈寂寞〉ではなく、〈寂漠〉という文字が思い浮かんだ。寂しさの砂漠あるいは砂漠の孤独。チリに生まれ、青年期…
書評 - 『フランス組曲』(白水社)小野 正嗣
戦時下の人間描く一大絵巻1940年6月、ナチスドイツはフランスに侵攻する。フランス軍は敗走を重ね、パリをはじめとする北部はドイツ軍に占領される…
書評 - 『abさんご』(文藝春秋)小野 正嗣
読むことの不自由さからの解放〈読む〉とはどのような行為なのか? 画面をありのままに見ることの困難さを繰り返し述べてきた国際的な映画批評家・…
書評 - 『デイヴィッドの物語』(大月書店)小野 正嗣
闇の底から浮かび重なる声舞台は、ネルソン・マンデラ釈放後の1991年の南アフリカ共和国である。おそらくこの国ほど文学が国民の〈声〉となることが…
書評