読書日記

夏休み企画〈書評でGo on a Trip!〉北米編

  • 2020/08/10
長かった梅雨もすっかり明け、いよいよ夏です!いかがおすごしですか?
ALL REVIEWS 友の会で、「世界各地を〈書評〉で巡る」という企画が立ち上がりました。
※発案はかごともさん。書評推薦者はくるくるさん、hiroさん、やすだともこさん。

外に出づらい状況が続いておりますが、「思いを馳せる」ことで逆にエネルギーを溜められれば、と思います。
〈書評でGo on a Trip!〉企画、まずは北米編です!


北米にGo!

【アメリカ】
フィリップ・ロス 『プロット・アゲンスト・アメリカ もしもアメリカが・・・』(集英社)

評者:内田 樹

虚構と現実の薄い隙間には、しばしば現実よりも現実的なものが棲まっている。フィリップ・ロスはディックのSFを「本歌」として意識したはずである。そして、ディックのSFとの差別化をはかるために、自作には「実在の人物」以外のものは誰も出さないというルールを課した(らしい)。(この書評を読む)

プロット・アゲンスト・アメリカ もしもアメリカが・・・ / フィリップ・ロス
プロット・アゲンスト・アメリカ もしもアメリカが・・・
  • 著者:フィリップ・ロス
  • 翻訳:柴田 元幸
  • 出版社:集英社
  • 装丁:単行本(536ページ)
  • 発売日:2014-08-26
  • ISBN-10:4087734862
  • ISBN-13:978-4087734867
内容紹介:
もしも第二次大戦時に元飛行士で反ユダヤ主義者リンドバーグが大統領になっていたら…。7歳の少年の目線で差別にさらされる恐怖と家族・民族・国家を描く、ロス最高傑作とも評される歴史改変小説。

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。


【アメリカ】
ローラ・インガルス・ワイルダー 『大きな森の小さな家 ―インガルス一家の物語〈1〉』(福音館書店)

評者:杉江松恋

秘密基地派の僕にとっては、実りの秋は同時に冬ごもりに備える季節でもある。やがて来る厳冬の前に、美味(おい)しいものをたくさん蓄えるのだ。そして、狭い空間でぬくぬくしながらぱくぱく食べるのだ――そんな密(ひそ)かな願望を文章で満たしてくれたのが、ローラ・インガルス・ワイルダーの『大きな森の小さな家』だった。(この書評を読む)

大きな森の小さな家 ―インガルス一家の物語〈1〉 / ローラ・インガルス・ワイルダー
大きな森の小さな家 ―インガルス一家の物語〈1〉
  • 著者:ローラ・インガルス・ワイルダー
  • 翻訳:恩地 三保子
  • 出版社:福音館書店
  • 装丁:文庫(256ページ)
  • 発売日:2002-06-20
  • ISBN-10:4834018083
  • ISBN-13:978-4834018080
内容紹介:
ウィスコンシン州の「大きな森」の丸太小屋に、ローラと、とうさん、かあさん、姉のメアリイ、妹のキャリーが住んでいます。物語は、冬がくるまえの食料作りからはじまり、ローラ五歳から六歳までの、一年間の森での生活が、好奇心いっぱいのローラの目を通して生き生きとものがたられます。小学校中級以上。

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。


【アメリカ】
トマス・ピンチョン 『重力の虹』(新潮社)

評者:斎藤 環

本書の通読体験は、大げさではなしに評者の「読書」概念を変えた。それは、読書に関わるシナプス結合そのものを組み替えられてしまうような、きわめて強烈な経験だった。そう、『重力の虹』は、「文学と脳」の関係性をあらためて問い直すための小説なのだ。(この書評を読む)

トマス・ピンチョン全小説 重力の虹[上] / トマス・ピンチョン
トマス・ピンチョン全小説 重力の虹[上]
  • 著者:トマス・ピンチョン
  • 翻訳:佐藤 良明
  • 出版社:新潮社
  • 装丁:単行本(751ページ)
  • 発売日:2014-09-30
  • ISBN-10:4105372122
  • ISBN-13:978-4105372125
内容紹介:
「一筋の叫びが空を裂いて飛んでくる。」V2ロケットが超音速で落ちてくる。突然の死をもたらすナチの新型兵器の恐怖が覆うロンドン、1944年。その調査に当たる主人公スロースロップが作成する… もっと読む
「一筋の叫びが空を裂いて飛んでくる。」V2ロケットが超音速で落ちてくる。突然の死をもたらすナチの新型兵器の恐怖が覆うロンドン、1944年。その調査に当たる主人公スロースロップが作成するのは謎のナンパ地図。やつは予知が出来るのか、それともロケットが呼ばれるのか。因果の逆転、探求の旅の始まり。キーワードは…“勃起”!ロケットはペニスか。バナナはロケットか。歴史小説?科学小説?ミステリ?ポルノ?ギャグ?SF?ファンタジー?カテゴリーなど飛び越えて、物理数学工学などほんの序の口、神話に宗教、経済学に心理学、革命に暴力に陰謀史観、セックス・ドラッグ・ロックンロールのカウンター・カルチャーに女装や男色、ボンデージ、フェティッシュ鞭にロリータ超能力やら降霊術、自動書記に怪盗スパイに海賊アナキスト…天才作家の百科全書的な知の坩堝から立ち昇る、「虹」の彼方には何が見えるのか―?

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【アメリカ】
マーク・トウェイン 『ハックルベリー・フィンの冒けん』(研究社)

評者:池内 紀

『ハックルベリー・フィン』が初めて訳されて百何年になるのか知らないが、ここに初めて日本語として名作が誕生した。(この書評を読む)

ハックルベリー・フィンの冒けん / マーク・トウェイン
ハックルベリー・フィンの冒けん
  • 著者:マーク・トウェイン
  • 翻訳:柴田 元幸
  • 出版社:研究社
  • 装丁:単行本(558ページ)
  • 発売日:2017-12-19
  • ISBN-10:4327492019
  • ISBN-13:978-4327492014
内容紹介:
★柴田元幸氏がいちばん訳したかったあの名作、ついに翻訳刊行。 ●オリジナル・イラスト174点収録 ●訳者 柴田元幸氏の作品解題付き(2017年、第6回早稲田大学坪内逍遙大賞受賞)「トム・… もっと読む
★柴田元幸氏がいちばん訳したかったあの名作、ついに翻訳刊行。
 ●オリジナル・イラスト174点収録
 ●訳者 柴田元幸氏の作品解題付き(2017年、第6回早稲田大学坪内逍遙大賞受賞)


「トム・ソーヤーの冒けん」てゆう本をよんでない人はおれのこと知らないわけだけど、それはべつにかまわない。あれはマーク・トウェインさんてゆう人がつくった本で、まあだいたいはホントのことが書いてある。ところどころこちょうしたとこもあるけど、だいたいはホントのことが書いてある。べつにそれくらいなんでもない。だれだってどこかで、一どや二どはウソつくものだから。まあポリーおばさんとか未ぼう人とか、それとメアリなんかはべつかもしれないけど。ポリーおばさん、つまりトムのポリーおばさん、あとメアリやダグラス未ぼう人のことも、みんなその本に書いてある。で、その本は、だいたいはホントのことが書いてあるんだ、さっき言ったとおり、ところどころこちょうもあるんだけど。
それで、その本はどんなふうにおわるかってゆうと、こうだ。トムとおれとで、盗ぞくたちが洞くつにかくしたカネを見つけて、おれたちはカネもちになった。それぞれ六千ドルずつ、ぜんぶ金(きん)かで。つみあげたらすごいながめだった。で、サッチャー判じがそいつをあずかって、利しがつくようにしてくれて、おれもトムも、一年じゅう毎日(まいんち)一ドルずつもらえることになった。そんな大金、どうしたらいいかわかんないよな。それで、ダグラス未ぼう人が、おれをむすことしてひきとって、きちんとしつけてやるとか言いだした。だけど、いつもいつも家のなかにいるってのは、しんどいのなんのって、なにしろ未ぼう人ときたら、なにをやるにも、すごくきちんとして上ひんなんだ。それでおれはもうガマンできなくなって、逃げだした。またまえのボロ着を着てサトウだるにもどって、のんびり気ままにくつろいでた。ところが、トム・ソーヤーがおれをさがしにきて、盗ぞく団をはじめるんだ、未ぼう人のところへかえってちゃんとくらしたらおまえも入れてやるぞって言われた。で、おれはかえったわけで。
——マーク・トウェイン著/柴田元幸訳『ハックルベリー・フィンの冒けん』より

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【カナダ】
マーガレット・アトウッド 『オリクスとクレイク』(早川書房)

評者:鴻巣 友季子

『侍女の物語』などで未来の管理社会を鋭く描いた作家だが、本作は終末世界のモチーフを組み合わせてSFの色合いを強めた野心作であり、〈マッドアダム〉3部作の第1作である。(この書評を読む)

オリクスとクレイク / マーガレット・アトウッド
オリクスとクレイク
  • 著者:マーガレット・アトウッド
  • 翻訳:畔柳 和代
  • 出版社:早川書房
  • 装丁:単行本(467ページ)
  • 発売日:2010-12-17
  • ISBN-10:4152091819
  • ISBN-13:978-4152091819
内容紹介:
人類がいなくなった海辺で、スノーマンは夢うつつを漂っている。思い出すのは、文明があったころの社会。スノーマンがまだジミーという名前だった少年時代。高校でめぐりあった親友クレイクと… もっと読む
人類がいなくなった海辺で、スノーマンは夢うつつを漂っている。思い出すのは、文明があったころの社会。スノーマンがまだジミーという名前だった少年時代。高校でめぐりあった親友クレイクとかわした会話。最愛の人オリクスとのひととき-。誰がこんな世界を望んでいたのだろうか。そして、自分はなにをしてしまったのだろうか。カナダを代表する作家マーガレット・アトウットが透徹した視点で描き出す、ありうるかもしれない未来の物語。

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