書評

『スパイにされた日本人―時の壁をこえて紡ぎなおされた父と娘の絆』(悠書館)

  • 2017/07/01
スパイにされた日本人―時の壁をこえて紡ぎなおされた父と娘の絆 / エドナ・エグチ・リード
スパイにされた日本人―時の壁をこえて紡ぎなおされた父と娘の絆
  • 著者:エドナ・エグチ・リード
  • 翻訳:加藤 恭子,平野 加代子
  • 出版社:悠書館
  • 装丁:単行本(247ページ)
  • 発売日:2012-07-01
  • ISBN-10:490348758X
  • ISBN-13:978-4903487588
内容紹介:
国家によって断ち切られた家族の絆を取り戻すための、理解と和解への長い旅路の物語。

愛憎と曲折、娘の視点でつづる

1920年代、ロンドンに留学中のタキこと、江口孝之は英国女性と結ばれ、娘エドナらの子供に恵まれる。

本書は、エドナによる父親タキの回想、という形式をとる。一家にとって、タキはよき父親ではなく、浮気で身勝手な男、という存在でしかない。真珠湾開戦の前年7月、タキは政治的な理由でスパイの嫌疑をかけられ、逮捕されて収容所に送られる。

その結果、エドナたちは周囲から白眼視され、さらに日英間に戦争が始まるや、敵国人の一家とみなされて、ますます苦境に陥る。そうした経緯からエドナは父親に愛憎半ばする、複雑な感情を抱く。しかし、年とともに思慕の念を募らせ、戦後父親が日本へ送還されると、手紙を出して和解の道を探り始める。

当然のことながら、本書はエドナの視点で構成されているため、タキの心情が十分に描き切れていない。さりとはいえ、氷が解けるまでの長い道のりは、つらい中にも心を打たれるものがある。
スパイにされた日本人―時の壁をこえて紡ぎなおされた父と娘の絆 / エドナ・エグチ・リード
スパイにされた日本人―時の壁をこえて紡ぎなおされた父と娘の絆
  • 著者:エドナ・エグチ・リード
  • 翻訳:加藤 恭子,平野 加代子
  • 出版社:悠書館
  • 装丁:単行本(247ページ)
  • 発売日:2012-07-01
  • ISBN-10:490348758X
  • ISBN-13:978-4903487588
内容紹介:
国家によって断ち切られた家族の絆を取り戻すための、理解と和解への長い旅路の物語。

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初出メディア

朝日新聞

朝日新聞 2012年9月16日

朝日新聞デジタルは朝日新聞のニュースサイトです。政治、経済、社会、国際、スポーツ、カルチャー、サイエンスなどの速報ニュースに加え、教育、医療、環境、ファッション、車などの話題や写真も。2012年にアサヒ・コムからブランド名を変更しました。

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