書評

『ハイテク考古学』(丸善)

  • 2017/09/18
ハイテク考古学  / 坂田 俊文
ハイテク考古学
  • 著者:坂田 俊文
  • 出版社:丸善
  • 装丁:新書(163ページ)
  • ISBN-10:4621050079
  • ISBN-13:978-4621050071
内容紹介:
エックス線や赤外線などの目に見えない光が写し出す「鎌倉の大仏」や「千本閻魔堂の地獄絵」の実像、光ファイバーがとらえた「藤ノ木古墳」の内部の謎、コンピュータを駆使した画像解析によっ… もっと読む
エックス線や赤外線などの目に見えない光が写し出す「鎌倉の大仏」や「千本閻魔堂の地獄絵」の実像、光ファイバーがとらえた「藤ノ木古墳」の内部の謎、コンピュータを駆使した画像解析によって解き明かされた阿武山古墳に眠る藤原鎌足?の実像や法隆寺の壁画、等々、歴史への深い洞察と現代の最先端技術が結びついて次々と明らかにされてゆく考古学上の謎の数々。まさに、ハイテクと考古学との出会いによって生まれた新しい世界を紹介する。
時代の先端をいくハイテク技術の研究と、古代にロマンを抱く考古学と――両者は一見すると、未来と過去という全く逆の方向を見つめている学問のように思われる。

「考古学の人達からみれば我々はインベーダーです。」と言う著者は、人工衛星による地球環境観測などを仕事の中心とする、まさにハイテク畑の人。それが、ひょんなことから考古学の世界へ参加することになった。

きっかけは、鎌倉の大仏さまの「お顔色」。修復の後、何だか以前と変わっているように見えると、心配する住職の話から、科学的に調べてみようということになった。「お顔色」の変化というのは、緑青が原因で、しかも腐食の状態を調べていくうちに、場所によってブロンズの成分がずいぶん違うことがわかる。さらに体のいろいろな所を調べると、どうも上にいくほど成分が悪い。ここで興味深い推理がひとつ。浄財として集まった当時の流通貨幣をべースに鋳造されたのではないかと考えると、下のほうから造られた大仏は、その時その時の流通貨幣の質を、まさに体現していることになる。気の毒なことに、最後に造られたお顔のころは、質のよくない宋銭が出回っていたらしい……。

このように、歴史的な資料や、考古学的な考察と、うまく結びついてゆく時、「ハイテク考古学」は力を発揮する。

赤外線写真を使っての壁画の復元、光ファイバーでのぞく古墳、X線画像によるミイラの分析、などなど。読んでいて、まことにワクワクする。

こういう方法について、考古学を愛する人の中には「なんでもキカイで調べてコンピューターに入れればいいってもんじゃないよ。味気ないなあ」と、反発を感じる人もいるかもしれない。そういう人にこそ、読んでほしい、と思う。

ハイテク技術は、いろいろなことを解き明かしてくれる。が、それは決して夢をこわし想像力を失わせるものではない。むしろ、夢をふくらませ、さらに想像力を刺激してくれるものなのである。

ナスカの地上絵を写し出す衛星写真、ジンギスハーンの陵墓を捜す人工衛星、――今や宇宙をまきこんでの考古学となりつつある。

大きな貢献をしながら、著者をはじめ、研究に関わっているハイテク畑の人たちが「分析はするが考古学的なコメントはしない」という姿勢に徹している点も、印象に残った。

【この書評が収録されている書籍】
本をよむ日曜日 / 俵 万智
本をよむ日曜日
  • 著者:俵 万智
  • 出版社:河出書房新社
  • 装丁:単行本(205ページ)
  • 発売日:1995-03-01
  • ISBN-10:4309009719
  • ISBN-13:978-4309009711
内容紹介:
大好きな本だけを選んで、読んだ人が本屋さんへ行きたくなるような書評を書きたい-朝日新聞日曜日の書評欄のほか、古典文学からとっておきのお気に入り本まで、バラエティ豊かに紹介する、俵万智版・読書のススメ。

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

ハイテク考古学  / 坂田 俊文
ハイテク考古学
  • 著者:坂田 俊文
  • 出版社:丸善
  • 装丁:新書(163ページ)
  • ISBN-10:4621050079
  • ISBN-13:978-4621050071
内容紹介:
エックス線や赤外線などの目に見えない光が写し出す「鎌倉の大仏」や「千本閻魔堂の地獄絵」の実像、光ファイバーがとらえた「藤ノ木古墳」の内部の謎、コンピュータを駆使した画像解析によっ… もっと読む
エックス線や赤外線などの目に見えない光が写し出す「鎌倉の大仏」や「千本閻魔堂の地獄絵」の実像、光ファイバーがとらえた「藤ノ木古墳」の内部の謎、コンピュータを駆使した画像解析によって解き明かされた阿武山古墳に眠る藤原鎌足?の実像や法隆寺の壁画、等々、歴史への深い洞察と現代の最先端技術が結びついて次々と明らかにされてゆく考古学上の謎の数々。まさに、ハイテクと考古学との出会いによって生まれた新しい世界を紹介する。

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