書評
『ドキュメント在日本朝鮮人連盟 1945‐1949』(岩波書店)
胸打つ民族運動の熱のたぎり
わずか四年間、しかし驚くべき濃密な活動を展開した団体があった。それが一九四五年結成、四九年に強制解散に追いこまれた在日本朝鮮人連盟(朝連)だ。本書は豊富な原資料を駆使し、全体像をあざやかに描きだす。瞠目(どうもく)するのは生活擁護や財産取得、教育闘争から映画、文芸、美術、スポーツまで文化活動の実態が明らかにされていること。戦後の混乱下にありながら、かくもこまやかな動きが展開、模索されていたとは。掘り起こされた事実がみずからの文化や歴史に誇りを求める切実と必要をリアルに訴えかけ、胸を打つ。
さらに特筆すべきは活動中に生まれた朝鮮民主主義人民共和国、日米両政府、この三者との関係性のダイナミズムを捉(とら)える視点だ。だからこそ、大衆運動から全国組織に発展しつつも、強制解散の終焉(しゅうえん)を迎えた運命が、いっそう浮き彫りになっている。
長年朝鮮半島の食文化を取材しながら韓国・朝鮮のひとびとと関(かか)わってきた者として、在日を生きる精神の支柱のありかを痛切に認識しつつ読んだ。客観的な記録集であるとともに民族運動の熱の滾(たぎ)りをつたえる、2段組み419ページの労作である。
朝日新聞 2009年05月17日
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